9.言葉の力
淑徳大学1年 浅井しおり
最近、末尾に「(語彙力)」と書いた文をSNSでよく目にする。
伝えたい言葉が浮かばないときに、「語彙(ごい)が乏しい」という意味で使われているようだ。
私も、努力が実を結んだり、期待を背負いながら失敗したりしたとき、自分の感情を適切に表現できず、はがゆい思いをしたことがある。
高校時代、私は図書委員長を2年間務めた。「未経験のことに挑戦したい」と思ったからだが、肝心の読書はほとんどしなかった。ただ、推薦本のポップを制作する仕事が興味深く、将来はコピーライターになりたいと考えるようになった。
街中の広告にはセンスがある。すてきな広告のコピーからは、付け焼き刃でない美しさを感じる。そんな言葉の使い手たちは、本を読むことで言葉の引き出しを増やしてきたのだろう。
そこで、今さらだが、私も読書をするようになった。
三浦しをんさんの『舟を編む』からは、辞書作りに励む人たちの言葉に対する鋭い感性を知った。言葉が持つ大きな力も感じた。
燃え殻さんの恋愛小説『ボクたちはみんな大人になれなかった』は、時が流れる中で感じる虚無感や、小さな喜びを思い起こさせ、文章のひとつひとつが胸に刺さった。
言葉は人の心に刺激を与えることができる。「ペンは剣よりも強し」という言い方があるように、「言葉は剣よりも強い」と私は思う。
私も言葉の力で、誰かに一歩踏み出す勇気を与えたい。言葉と向き合わず、「(語彙力)」と末尾につけるのを避けよう。
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