「コロナ明け」の就活 常見陽平さんに聞いてみた ~ 大学生が取材しました

 

 

 25卒の就職活動も本格化。サマーインターンの選考に向け、忙しい日々が続きます。コロナ禍の3年間を経た就活は、先輩たちと何が変わり、何が変わらないのか。就活に関する多くの著書があり、私の大学でも就活指導を担当する千葉商科大学の常見陽平准教授にインタビューしました。(千葉商科大学・吉越彩絵)

 

コロナで変わった就活、変わらない就活

 

――コロナ禍を機に、どのように就職活動は変化したのでしょうか?

 

 コロナ前から就活は変化していました。採用活動も会社説明会などはオンライン化が始まっていました。むしろコロナで一気に舵を切った、という面が強いですね。「コロナ明け」だと言われる今、オンライン化によるメリット、デメリットを考える時期にきているといえます。

 

――具体的にはどのような点でしょうか。

 

 例えば、企業の概要を知るための説明会などは、移動などのコストがかからない、という点で、オンライン化は学生にも大きなメリットがあります。また、企業の側もマンパワーをあまりかけずに、より多くの学生に自社を知ってもらうことができるようになりました。

 

 一方、デメリットですが、企業にとっては学生側の顔を見ることができず、反応がわからないというのは致命的な点です。しかし、総合的に見れば企業にも学生にも恩恵のも多く、初期段階の接点として今後も残っていくでしょうね。

 

 

――選考の面ではどのような変化があるでしょうか。オンライン面接などは今後も続くのでしょうか。

 

 学生も面接官も、空気感を共有できない点でオンライン面接だけで採用する企業は減っていくことでしょう。面接官からすると①テンポがつかみづらい②人柄がわからない③掘り下げた質問がしにくい――など、さまざまな課題もあります。

 

 また、今年度から一定の条件を満たしたインターンシップは、その評価を選考に利用できるようになりました。「高度人材」に限っての早期選考も認められています。コロナ前から進んでいた早期化の流れはさらに強まっていくでしょう。

 

「決められない」就活生にならないために

 

――コロナ禍で採用を見合わせていた業界も、業績が急回復しています。今後、就活は激しさを増していくのでしょうか。

 

 これもコロナ前からの課題ですが、社会全体の人手不足は変わりません。すべての業界・企業が危機を感じているといっても過言ではありません。航空や旅行などの業界は、コロナ禍で多くの人材が業界を離れざるを得ない状態が続きました。問題は、業績が戻っても、これらの人材が業界に戻ってこない、という点です。コロナ禍でITスキルなどの「リスキリング」を自主的に行ったこれらの業界の人たちは、他の業界に移ってしまいました。ITや旅行などで顕著ですが、どの業界でも人材の争奪戦は続きます。

 


――早期内定や、複数内定など、就活に対しては明るいニュースも多く聞きます。私たち25卒の就活生は、どのような心構えで臨めばいいのでしょうか。

 

 まず、グローバル化に「前のめり」な学生の間では、日本企業の今後を心配し、積極的にグローバル企業に挑戦しようというケースが多くみられます。このような学生は国内の大手企業も含め、激しい争奪戦になることは間違いありません。当面は「売り手市場」が続くでしょう。最近では、比較的就活のスタートがゆっくりな学生や、「前のめり」でないような学生でも、複数内定を得ることが珍しくありません。

 

 

 

――では、そこまで危機感を抱く必要はないということでしょうか?

 

 最近よく聞くのは、だからこそ、入社を「決められない」学生が増えている、ということです。いくら内定をたくさん持っていても、「決められない」のでは、意味がありません。結局のところ、対面開催の説明会に足を運んだり、OB・OG訪問で働いている人の生の声を聞いたり、という「泥臭い」方法で得た情報を基に考えることがより重要になってくるでしょう。

 

今だからこそ、「就活には新聞」

 

――以前から就活における新聞活用の重要性を訴えていらっしゃいます。

 

 お世辞ではなく、今ほど、新聞が就活に役立つ時代はありません。読売新聞の「就活ON」などはもちろん、すべての記事が就活に関係しているといいっても過言ではありません。様々なジャンルのニュースに触れ、自分だったらどう感じるか、どう考えるか、はもちろん、違う立場に居たらどう考えるか----などの、様々な視点で考えるように心がけてください。そうすることによって、面接官や先輩社員の考えも含め、様々なものの見方を想像できるようになります。「就活脳」が鍛えられるのです。

 

 

 新聞を読むことは、「考えの軸」を固めることにも役立ちます。例えば、選挙があれば、先ほど説明したような「様々な人の考え方」を比べられる絶好の機会です。政治に関心を持つことは、就活においてもマイナスにはなりません。様々な社会問題に対する企業のスタンスを知れば、企業・業界選択の参考になります。「決められない」状況で企業を決めるためのゆるぎない基準ができるのです。

 

――エントリーシートを書く上でも、質の高い日本語に触れることは大切ですね。

 

 新聞の記事は、長い歴史の中で工夫された構成と、読者にわかりやすくするための具体的な表現が特徴です。細かな表現のチェックにも多大な労力を使っているため、言葉の誤用などもありません。エントリーシートや面接で必要なのは、簡潔に、間違いなく、わかりやすく自分のことを伝える力です。新聞を強い味方にして、就活を勝ち抜いていってください。

 

常見陽平(つねみ・ようへい) 1997年一橋大卒。リクルート入社。「とらばーゆ」「じゃらんnet」編集部などを経て、2005年から株式会社バンダイで新卒採用を担当。ベンチャー企業勤務を経て2012年、一橋大学大学院社会学研究科に修士課程入学し、2014年修了。2015年から千葉商科大学で教鞭を執り、2020年に同大国際教養学部准教授。「なぜ、残業はなくならないのか」(祥伝社新書)「僕たちはガンダムのジムである」(日本経済新聞社)など、就活やキャリアに関する著書多数。

 

(2023年8月 1日 00:15)
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