地球が1辺1万キロメートルの立方体だったら環境はどう変化するのか──。ユニークなCG映像を教材とした日本科学協会の出前授業「立方体地球への旅」が7月17日、晃華学園中学校高等学校(東京都調布市)で行われた。気象学が専門の木村龍治・東大名誉教授を講師に、中高生20人と和泉田健治校長らが参加した。
「静止気象衛星ひまわり8号から、地球の昼と夜はどのように見えるのか」
模型セットを使い、木村教授が教室という小さい空間でその様子をスクリーンに映し出すと、「うわ、すっご~い」「昼と夜の仕組みが分かったよ!」と生徒たちはどよめいた。
仕組みは簡単だ。教授が持参したのは、自転するように動く地球儀と、ひまわり8号の視点に見立てた親指サイズの小型ワイヤレスカメラ。カメラは地球儀が回ってもいつも東京の真南を映し出すようにセットされている。
宇宙から見た昼と夜
教室の電気を消して、この地球儀に太陽からの光に見立てたライトを照射すると、地球は回転に応じて、明るく光る部分と暗い影の部分が浮かび、あたかもひまわり8号から地球を見るように見える。スクリーンに映った地球儀は東から白みはじめ、夜明け、昼、そして日没、夜を繰り返した。
教授はひまわり8号からのカラー観測画像も紹介、春と夏では昼と夜の見え方が変わることを解説したあと、違いが生じる理由を質問。それに廣瀨暖菜さん(高1)が「地軸が傾いているから」と答えると、木村教授は「そう、そうなんです。正解」と実に嬉しそうだ。
もしも地球が立方体だったら?
昼と夜、季節変化、大気循環を説明したうえで、木村教授は「地球が球体というのが本質的に重要。でも、その重要性は球を見ているだけでは分かりません」と話し、CG映像「Cubic Earth ──もしも地球が立方体だったら──」をスタートさせた。
映像は、宇宙飛行士が四角い地球に遭遇して探索する、という想定だ。四角い惑星では、大気のある場所とない場所が生じ、面によって中心部は365気圧・摂氏500度という過酷な環境となる。海の面積は小さくなり、水深は285キロメートルにも達する。木村教授を議長に、地球物理学や惑星科学などの有識者会議が5年かけて徹底的に議論、計算を重ねて製作した仮想地球のモデルだ。
「地球が丸くてよかった」
30分の映像の合間に木村教授は、立方体地球の環境を左右する大きなポイントが重力の作用であること、なぜ海が凸レンズ状に盛り上がっているのかなどを説明した。
2時間の授業が終わると、木村教授は生徒たちに囲まれた。
「立方体地球の台風のメカニズムが分からない」
「プレートはどうなっているのですか」
立方体地球という奇想天外な視点に触発された生徒たちの疑問は尽きることがなく、74歳の気象学者と10代のセッションは1時間半にも及んだ。
最後まで残った4人の生徒たちは「心から地球が丸くてよかった」「地球が絶妙なバランスの上に成り立っていることが分かった」と話していた。
映像は>>日本科学協会のHPでも公開されている。
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