カヌー(スラローム)選手「練習の努力が結果に 最高の気分」(フランス・ホストタウン特集4)

 東京五輪で4人中3人が入賞という好成績を収めたカヌー・スラロームのフランス選手たち。千葉県浦安市は2019年に事前合宿で選手を受け入れ、子どもたちとの交流にも力を入れた。五輪直前の公式練習期間中、浦安市に滞在した選手2人に当時の思い出やカヌーの魅力などを聞いた。(聞き手:東中野はるか/玉川萌寧)

 

「練習の努力が結果に 最高の気分」

ボリス・ヌブ選手(35) 男子カヤックシングル7位入賞

 

──カヌーを始めたきっかけは?

 始めたのは8歳くらいの頃。両親がカヌーをやっていたので、家族みんなで川を散歩するような感覚でした。13歳頃に初めて試合に出て、とにかく楽しかった。試合の醍醐味は、いい成績を取る楽しさに加えて、厳しい練習で努力してきたことを出し切り、それが結果につながった瞬間の気持ち良さですね。今でも楽しんでカヌーに取り組んでいます。

 

──フランスの代表になろうと思ったのはいつ頃?

 16~18歳くらいだったかな。この頃からフランス国内の色々な試合で優勝したり、非常にいい成績を取れたりしたので、国の代表になれるんじゃないかな?と思い始めました。

 

──2019年の事前合宿では浦安市を訪れ、子どもたちと交流したそうですね。

 小学校の体育館にいた大勢の子どもたちが大歓迎してくれました。自己紹介やカヌーの紹介をした後、玉入れや福笑いなどをしたことを覚えています。特に楽しかったのは玉入れですね!みんなでげらげら笑いながら玉を入れたり片付けたりするスピードを競いました。皆さんが楽しみながら出迎えてくれたので、とてもいい思い出が残っています。

ボリス・ヌブ選手(ロイター)

 

──今回の滞在で、コロナ禍で大変なことはありますか?

 やはり、ホテルと練習場所の行き来しかできないのはちょっと息苦しいですね。外でマスクを着けなくてはいけないのも、暑い時は大変です。

 ただ、もっと手続きが大変だったり自由がなかったりするかと思っていましたが、色々なことが組織立ってしっかり調整されています。ホテルでも、食べ慣れているお肉やフライドポテトに加えて、お米や魚などバラエティに富んだ質の高いものを毎日食べられていますし、浦安市での滞在は非常に快適です。

 

──カヌーの練習方法は、コロナの影響を受けて変わりましたか?

 外での練習が中心ですので、少し移動に制限はあるものの大きく変わった点はなかったです。

 

──浦安市の印象は?お気に入りのスポットはありますか。

 浦安市は海が目の前にあり、非常にリラックスできる場所です。2019年の合宿時には、ほぼ毎日のように市内の温泉施設「大江戸温泉物語 浦安万華郷」に通って楽しみました。

 施設の中に食事処や畳の休憩広場があり、ゴロゴロしながらぼーっとする時間が過ごせてよかったです。ヨーロッパにも温泉はあるけど、温泉と食べ物と休憩所が全て合わさってリフレッシュできる場所を見たのは初めてでした。とても楽しく、リラックスできました。今回はホテルと練習会場の往復しかできませんでしたが、コロナが収束したらまた是非行きたいです。

 

 

カヌーと合気道 感覚に共通点

マリゼリア・ラフォン選手(34) 女子カヤックシングル

 

──カヌーを始めたきっかけは?

 いとこがカヌーをやっていたことがきっかけでした。外でできるスポーツなので気持ちがよく、すぐにのめり込みましたね。今でもその気持ちは変わらなくて、カヌーが大好きです。

 

──カヌーの魅力は?

 水と接している感覚やカヌーが水の中をすーっと進んでいくのが、とても気持ちいいですね。また、スピードが出ますし、コースでは大きな滝のようなところに落ちていくのでスリルもあります。

 スラロームは、コースに一つとして同じ場所はないので常に違う場所にチャレンジしているようで、その場の状況を見て順応する力や、一気に進むのか慎重に待つのか判断する力を求められるスポーツです。

 カヌーと日本の合気道には似ているところがあると思っています。カヌーでは、体はリラックスしながらも、しっかりとカヤックに力を伝えなくてはならない。力を抜きつつ、体の中にある大きな力を引き出す感覚が合気道に近いですね。そんなこともあって、2019年の事前合宿時には浦安市で合気道体験もしました。

 

──試合前に行うルーティンはありますか?

 音楽は必ず聴くようにしています。曲は、その時の自分を勇気づけてくれたり鼓舞してくれたりするものをその時々で選んでいます。

 それから、試合が始まると必ず自分の周囲にあるカヤックやパドル、水に対して感謝をするようにしています。

 

──2019年の事前合宿で、一番記憶に残っていることは?

 日本に着いた時に浦安市の人たちが本当にあたたかく迎えてくれて、居心地がよかったのを覚えています。皆さんの人を思いやる心遣いがとても気持ちがよかったです。

マリゼリア・ラフォン選手(撮影・冨田大介)

 

──当時の子どもたちとの交流では、羽子板をしたと聞いています。

 羽子板はすごく楽しかったです。最初はうまくできなくて変な場所に羽を飛ばしてしまったりしたけど、とにかく楽しかったです。ほかにも習字を体験しました。企画してくださった市の人たちに感謝しています。

 

──交流の感想は?

 まず、子どもたちが私たちを見て喜んでくれて、歓迎してくれたということを本当にうれしく感じました。日本の伝統文化にも触れられた一方で、子どもたちがハロウィンなど西洋から来たイベントも楽しそうに取り組んでいるのを見て、日本文化の二つの面を見られたことも面白かったです。子どもたちからいいエネルギーをもらいました。私は人見知りが激しいのですが、当時はたくさん子どもたちがいたにも関わらず、とてもリラックスして交流を楽しめました。

 

──19年の食事では、何が一番おいしかった?

 浦安で食べた日本食は最高においしかったです。一番好きな日本食はおすしで、口の中でとろけるような感覚があるマグロが特に好きです。当時は、大好きな日本食を食べられて素敵な時間を過ごせました。

 

──今後、行ってみたい浦安市のスポットは?

 ぜひコロナが収束したら家族を連れて日本に来て、また浦安でおいしいおすしを食べたいです。神社など、浦安市の色んなスポットにも遊びにいきたいですね。


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(2021年9月22日 15:09)
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