柔道選手「細やかな対応に感謝」(フランス・ホストタウン特集3)

獲得したメダルを見せるシシケ選手(下)、ムケジェ選手(中段右)とフランス・ホストタウンの高校生たち。

 フランス柔道は東京五輪でメダル8個を獲得し、日本(12個)に次ぐ好成績を収めた。選手団は試合前にホストタウンの兵庫県姫路市で事前合宿を実施した。大会の前後に4人の選手がオンラインでのインタビューに応じた。

 

細やかな対応に感謝

サラレオニー・シシケ選手(23) 混合団体金メダル、女子57キロ級銀メダル

 

──メダル獲得おめでとうございます。

 初出場のオリンピックで2つのメダルが取れました。最後まで戦い抜いて取ったメダル。自分を誇りに思います。

 

──柔道を始めたきっかけは何ですか。

 両親は格闘技を習わせようと考え、始めは空手にしようと思ったようですが、私の村に教えてくれる場所がなく、代わりに柔道を習いました。4歳の時です。

 

──試合前には姫路で合宿しましたね。

 皆さんと直接の交流はできませんでしたが、逆に言えば感染対策は完璧でした。バスに乗る私たちに手を振ってくれるなど、皆さんの存在が支えになりました。対応も細やかで、トレーニングにも集中できました。

 音楽祭で日本の方々がフランス国歌を歌ってくれ、うれしかった。日本の人のおもてなしは温かいものだ、と思いました。

 

──柔道をやっていてよかったことはなんですか。

 柔道を通じて人間的に成長できたと思っています。それに、持てる力を出し切って相手を倒していこうとする時に出るアドレナリンが好き。柔道をしていなかったら、田舎で誰にも会わずに暮らしていたかもしれない。こうやって様々な国に来ることで、視野が広がっていることを感じます。

サラレオニー・シシケ選手(撮影・里見研)

 

──日本の印象を教えてください。

 安全な国という印象です。日本の人はいつも笑顔で、いろいろ助けてくれます。日本の文化、特に日本料理に興味があります。

 

──好きな日本食は何ですか。

 ラーメン。フランスにも日本食はありますが、ヨーロッパ化されているので、本物の日本食が食べたいです。

 

──試合前のメンタルの保ち方について教えてください。

 3年前からメンタル専門のコーチを付けています。試合のたびに戦略を作り、どうやった勝てるか、予選を通過できるか、コーチと一緒に考えています。そのおかげでストレスを減らし、自分に自信を持つことができるようになっています。

 

──次は母国での大会です。抱負を聞かせてください。

 アスリートの人生で、自国でオリンピックが開催されることは大変うれしいことです。次は家族や友人が近くで応援してくれるので大会が楽しみです。個人戦でも金メダルを目指します。

 

 

国旗を描いた花壇に感動

リュカ・ムケジェ選手(25) 男子60キロ級銅メダル

 

──メダル獲得が決まった時、とても嬉しそうでした。

 きびしい試合で、肉体的にも疲れ果てていました。勝った時は心から安心して、その瞬間に涙が出ました。これまでの努力や家族、友人のことを思い出して幸せな気持ちになりました。言葉にならない喜びでした。

 

──姫路での思い出は?

 練習会場となった県立武道館の入り口にフランス国旗や黒帯をかたどった花壇が作られているのを見て感動しました。バスツアーも組んでくれました。遠くから見た姫路城は美しかった。皆さんと触れ合うことはできませんでしたが、私たちがバスで移動中に手を振ってくれるなど、町中の人が迎え入れてくれました。リラックスでき、試合に向けてコンディションを整えることができました。

国旗や黒帯をかたどった花壇。市民が選手に花束を手渡せない代わりに作ったという

 

──今回は無観客での大会となりましたね。

 家族や友人の応援がないのは残念。でも、今回は大会に参加できたこと自体ありがたいこと。状況を受け入れています。自分たちは恵まれていると思っています。

 

──柔道を始めたきっかけは何ですか。

 父親の影響で始めました。父はレスリングか柔道を習わせたかったようです。私は始め、レスリングの方が面白いかもしれないと思っていましたが、オリンピックで柔道の選手がメダルを取ったことで大きな話題になるのを見て、柔道がいいなと思いました。

 

──高校時代は何をしていましたか。

 水泳やバスケットボールもしていました。柔道の練習と並行して料理の勉強もしていて、資格も取りました。当時はジョージアに住んでいましたが、柔道の道に進もうと思い、フランスの柔道チームに参加しました。

リュカ・ムケジェ選手(撮影・竹田津敦史)

 

──柔道をしていてよかったことは何ですか。

 柔道をやっていることで日本に来ることもでき、いろいろな人に会うこともできました。試合で力を出し、メダルを取った時は自分を誇りに思います。

 

──好きな日本食は何ですか。

 おにぎり。中にツナが入っているものですね。

 

──フランスに帰国した後、どんな歓迎を受けましたか。

 大統領からお祝いのメッセージをもらいました。パリのトロカデロ広場で開かれた歓迎イベントには大勢が集まってくれてうれしかった。次は自国開催なのでプレッシャーもあります。ゆっくり休んでから練習に励みたいです。

 

(ここまでの聞き手:宇奈手壱莉/北村遥奈/卯城心羽/浅見悠加/穂積琳花)

 

 

日本的な価値観学べる柔道

アクセル・クレルジェ選手(34) 混合団体金メダル

 

──柔道を始めたきっかけを教えてください。

 父が柔道の指導者だったので、4歳の時に自然と柔道を始めました。私が元気すぎたので、落ち着かせるために始めさせたようです。フランスではどこに行っても柔道クラブがあるので簡単に始められます。柔道は日本的な価値観が学べるから人気があるんです。

 

──東京五輪の代表に選ばれた時、どう思いましたか。

 過去に2回、補欠選手としてオリンピックに行ったことはありますが、正式にオリンピックの代表になるのは初めてだったのでとても嬉しかったです。1年前から代表選手になるだろうと分かっていましたが、やはり正式に知らせを聞いた時にはとても嬉しかったです。

アクセル・クレルジェ選手(撮影・竹田津敦史)

 

──高校時代の生活を教えてください。

 スポーツ専攻の高校に通っていて、一日4時間は練習をしていました。勉強も忙しかったです。でも、週末は友達と遊んだり、集まって祭りに行って飲んで騒いだりしていました。それが唯一の息抜きでしたね。

 

──日本の印象について教えてください。

 若い頃から10数回は日本に来ています。日本の街は落ち着いてて、特に小さな街の小道を歩くのが大好きです。どこへ行っても本当に綺麗で驚かされます。すごく丁寧で、おもてなしをしてくれることが印象に残っています。

 コロナがなければ、姫路の街を歩いたり、姫路城を見に行ったりしたかったです。でも、皆さんにおもてなしをしていたき、ありがたく思っています。

高校生のインタビューに答えるピノ選手(右下左)とクレルジュ選手(右下右)。選手が手にするのは姫路市のイメージキャラクター「しろまるひめ」のぬいぐるみ

 

 

五輪のメダルは私の夢

マルゴー・ピノ選手(27) 混合団体金メダル

 

──柔道の良さはどんなところにあるんでしょうか。

 友情や自制心を身に付けることができるのが柔道。だから、フランスではしつけのために親が子供にやらせることが多いですね。私の場合、2000年のシドニーオリンピックでフランスのダビド・ドイエ選手が金メダルを取ったのを見て、かっこいいと思い兄弟と一緒に始めました。

 

──今回の大会への思いは。

 時間をかけて準備をし、練習もとてもしてきました。試合に勝てるかはモチベーションが大切。オリンピックでのメダルは全ての選手の夢であり、私の夢でもあります。

マルゴー・ピノ選手(撮影・竹田津敦史)

 

──高校時代は何をしていましたか。

 スポーツ専攻の生徒が集まる学科に通っていました。午前の授業はスポーツだけ。午後の授業もほかの高校生とは違う時間割が組まれていました。練習づけの生活でした。だからあまり遊ぶ時間はなかったです。週末に友達と久しぶりに会ったり、好きな趣味を楽しんだりしていました。ただ、かなりの時間、練習をしていましたね。

 

──今、楽しんでいることは何ですか。

 フランスの西の方の田舎に家族と住んでいたのですが、18歳の時からパリに住んでいます。時々自分の実家に帰って家族と会うのが楽しみです。また、海が好きなので、海に行くことやサーフィンをすることが楽しいです。山にも行って、パラグライダーもしています。

 

──日本の印象を教えてください。

 日本には10回以上来ています。日本の印象ですが、街がきれいで食べ物がおいしいこと。今回はコロナのために、あまり日本の人と触れ合えないのが残念ですが、日本に到着してからずっと温かいおもてなしをしてくださっていて、感謝しています。

 

(聞き手:宇奈手/北村/卯城)

 


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(2021年9月22日 15:09)
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