東京五輪のサーフィン競技は千葉県の釣ヶ崎海岸で開催され、会場に近いいすみ市はフランスのサーフィン選手団を受け入れた。選手は市内のホテルに滞在し、特産のイセエビや梨を食べて大舞台に臨んだ。
感染対策のため市民との交流はできず、地元の文化の紹介やビーチ清掃など、予定していた交流行事も中止となった。直接の交流ができない市民に代わり、市の職員やホテルの従業員が選手たちをもてなした。ホテルではイセエビ料理が食べ放題。市職員がサーフボードに塗るワックスの買い出しもした。
選手はホテルで卓球大会を開くなどリラックスした雰囲気。ミシェル・ブレ選手(35)は「食事にイセエビがたくさん出てきたのには驚いた」と振り返る。
選手たちは環境問題にも関心が高い。ジェレミ・フローレス選手(33)は、「クジラが飲み込まないように、ビーチではごみを拾っている。日本にも同じ思いを持つ人が多いのがうれしい」と話していた。
選手たちに提供された地元特産のイセエビ料理 |
「パラサーフィン」普及に市も協力
多くのサーファーが集まるいすみ市は、2020年にホストタウンに登録された。今後はサーフィンを通じてフランスとの交流を続ける方針。中でも力を入れるのが、障害があっても楽しめる「パラサーフィン」による街づくりだ。
「パラサーフィン」は、ボードに取っ手を付けたり、ボードに乗ることを人が補助したりすることで、障害があってもサーフィンが楽しめるように工夫したスポーツ。同市の太東海岸では「日本パラサーフィン協会」が3年前から大会を開いている。
同協会顧問の阿出川輝雄さん(78)は、サーフィン歴60年近いベテランサーファー。60歳の時に脳こうそくで右半身がまひしたことがきっかけでパラサーフィンを始めた。「アメリカでは、けがをした人たちのためのサーフィンセラピーが行われるなど、障害のある人が海に出やすい環境がある。やりたい気持があれば多くの人がサーフィンを楽しめる」と話す。同海岸は遠浅で波も穏やかなためパラサーフィンに向いているという。
パラサーフィンの普及に向けた活動には行政も協力し、太東海岸の段差にスロープを設け、トイレも改修した。パラサーフィンは現在、パラリンピックの競技種目にはないが、阿出川さんは「パリ大会で正式種目に採用されるように活動したい」と普及に意欲を見せている。
パラサーフィンの魅力を語る阿出川さん(左)と日本パラサーフィン協会理事の和田路子さん。足元は海岸に設けられたスロープ |
フランス発見!本場のコンクールで最上位に
千葉県は酪農が盛んな地域。いすみ市の高秀牧場では、150頭の乳牛を飼育し、チーズ作りも行っている。牧場自慢の一品がブルーチーズ「草原の青空」だ。
2015年にフランスの国際コンクール「モンディアル・デュ・フロマージュ」で最上位のスーパーゴールドを受賞。6週間かけて作るチーズは優しい味わいで、ブルーチーズが苦手な人にも好評だ。フランスの人からは「懐かしい味がする」と言われたそうだ。
高秀牧場ミルク工房店長の馬上温香さん(31)は、「同じミルクが原料でも職人によって味が違う。優しい人が作ると優しいチーズができるんです」と話していた。
高秀牧場の「草原の青空」 |
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