一緒に歌って一体感・兵庫県姫路市(フランス・ホストタウン特集7)

 「鳥肌が立った。日本の人がフランス国歌を歌ってくれたことに感謝したい」

 そう話すのは柔道男子60キロ級銅メダリストのリュカ・ムケジェ選手(25)。事前合宿で滞在した兵庫県姫路市で7月18日に開かれた音楽祭「姫路フランス祭」の思い出を振り返った。

 「フランス人選手に喜んでもらおう」と、フランス人になじみのある音楽を集めた音楽祭には、地元の交響楽団や吹奏楽団、合唱団などが出演。フランス選手団も招かれ、感染対策から一般の聴衆と離れた2階席で音楽を楽しんだ。

 音楽祭の最後はフランス国歌「ラ・マルセイエーズ」の合唱。2階席のフランス選手団も立ち上がって歌い、会場が一つになった。

 市立広嶺中3年でコーラス部部長を務める南穂花さん(14)も舞台に立ってフランス国歌を歌った。フランス語の歌詞をインターネットの動画を参考に1か月かけて覚えたという。南さんは「選手のパワーに圧倒された。自分たちの歌が選手の力になれたのならうれしい」と話していた。

姫路フランス祭でフランス国歌を歌う出演者。一緒に歌う2階席のフランス柔道チームの様子がホール壁面に投影された(姫路市の市文化センターで)

 

「フランス柔道の父」が結んだ縁

川石酒造之助(灘菊酒造提供)

 同市は2016年にフランスのホストタウンに登録された。これまで、フランスの柔道関係者を招いた文化交流などを進めてきた。そのきっかけとなったのが、「フランス柔道の父」と呼ばれる同市出身の柔道家・川石酒造之助(かわいし・みきのすけ)の存在だ。

 川石は1935年にフランスに渡り、パリに日仏柔道倶楽部を作り、柔道の指導にあたった。外国人にもわかりやすい教本を作り、7色のカラー帯も考案。帯の色で上達の程度を分かりやすくして練習意欲を高めた。

 川石の功績でフランスは柔道大国となった。フランス国内には5000か所以上の柔道クラブがあり、教育の一環として子供に柔道を習わせるケースが多いという。連盟登録の競技人口は約36万人と、日本の約12万人を大きく上回る。

 今も川石を尊敬するフランスの柔道選手は多い。混合団体金メダルのアクセル・クレルジェ選手(34)は、「父は川石先生から柔道の手ほどきを受けた。姫路に来られて故郷に戻った気分だ。大きなエネルギーをいただいた」と話していた。

姫路市で事前合宿を行ったフランス柔道チーム

 

フランス発見!美しい城同士も交流

 世界遺産・姫路城は1989年、フランスのパリ近郊にあるシャンティイ城と「姉妹城」として提携し、文化交流などを行っている。

 シャンティイ城は16世紀に建てられた部分と19世紀に再建された部分で構成されている。城内には美術館があり、美術品や図書で埋め尽くされている。近くには競馬場や馬術博物館もあり、多くの人が集まる。

 美しさで知られる2つの城は、交換植樹も実施。シャンティイ城の菩提樹(ぼだいじゅ)が姫路城の近くに植えられ、代わりに、姫路城の修復に使われたヒノキの一部を挿し木で育てた子孫がシャンティイ城に植えられた。

姫路城(左)とシャンティイ城(右、姫路市提供)

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(2021年9月22日 15:09)
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