高校生が見た被災地のいま(9)探検隊メンバーの被災体験1

 宮城県出身の探検隊メンバー、太田直希君と佐藤千夏さんは小学校6年生の時、東日本大震災を経験した。ツアーに際し、2人が寄せてくれた体験談を紹介する。

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私の被災体験

仙台第二高等学校2年 太田直希

 

 2011年、私が小学校6年生の時の話です。

 地震が起こった時は、学校で、図工の授業をしていました。卒業制作です。地震が起こると、水を入れたバケツが、机の上から落ちてきて、衣服が濡れました。揺れはとても長い時間続きました。当時、ニュージーランドで大地震が発生し、日本人学生のいたビルが倒壊したという報道がなされていました。そのため、僕の頭の中は、「学校が倒壊してしまう!」という思いと焦りで埋め尽くされていました。

 

 地震が収まると、校庭に避難しました。あの日は雪が降っていて、寒かったのを覚えています。その後、体育館に移動し、母の迎えを待ちました。しばらくして母が来て、家に帰りました。

 家に着くと、母は、私の姉を迎えに行くと言って中学校に向かいました。その時、私は家具や割れた食器が散乱した家で、一人きりでした。この時が一番辛かったです。何度も起こる余震と、ラジオから聞こえる被害の状況に、不安がこみ上げてきました。

 母は、1時間程してから姉と共に帰ってきました。私が「なんでそんなに遅かったの?」と聞くと、母は「間違えて中学校に行っちゃったの。小学校で待っていなければならなかったのに。」と答えました。私の地域では、小学生の兄弟がいる中学生は、小学校に避難する決まりになっており、年に1回、その訓練をしていました。しかし、実際の災害が襲ったあの日、正しい判断を下すのは本当に難しいことでした。

 

 私の住む仙台市は、電気・水道・ガスが全て遮断されたため、私たちはまた小学校に戻り、避難所で一夜を過ごしました。学校の先生方が自分の車のガソリンを提供して下さったおかげで、避難所は一晩中電気が灯されていました。しかし、余震の前には必ず「ゴゴゴゴゴゴ」と、地響きが聞こえてきて、その度に恐怖に襲われました。携帯のワンセグで津波の映像を見ましたが、画面の小ささからか、その脅威は把握していませんでした。

 

 翌朝、避難所に新聞が届きました。その時に初めて、被害の大きさに唖然としました。見開き一面に大きく掲載された写真が、危機の大きさを物語っていました。

 午前8時頃だったでしょうか、家に戻り、買い物に出かけました。母と姉は、スーパーに、私はコンビニに行きました。2時間程並び、母と姉はフルーツジュースと、乾電池を買うことができました。その一方で、私は駄菓子を一袋しか買うことができませんでした。それほど物資が不足していました。

 また、毎回の食事は、祖母に助けられました。私の家の隣には、祖母の家があり、そこには石油ストーブがありました。そのため、石油ストーブの上に鍋を乗せ、備蓄してあったそうめんを調理し、食べました。温かい食べ物を食べることができたのは、祖母のおかげでした。

 

 当時父は東京で単身赴任をしていました。地震直後は、全く連絡がつかないであろうと思っていましたが、またも祖母に救われました。祖母の家にあった黒電話が、電気のない状況でも使用可能で、父と連絡を取ることができたのです。その後父は、宅配便で食料を送ってくれました。また、山形の親戚も、車を運転して食料を届けに来て下さり、本当に多くの人に救われました。

 

 地震から3日後、電気が復旧しました。こうして避難所から家に戻った私たちですが、私が思わぬ迷惑をかけることになります。避難所で流行していたインフルエンザに、感染してしまったのです。もしも震災が夏に起きていたら、不衛生な環境が広まり、より危険だったのではないでしょうか。

 

 最後に、私の卒業式の話をします。地震によって、小学校の卒業式は予定を変更して行われました。本来なら、全て体育館で行うはずでしたが、避難所が開設されているため、卒業証書授与は、校舎内のホールで行い、卒業の歌のみ体育館で行いました。練習してきた卒業の言葉などは、割愛することになり、やりきれない思いでしたが、それ以上に辛い思いをしている人がいる人のために、と考えました。卒業の歌を歌い終えた時、避難所の方々が下さった拍手は、今でも覚えています。


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第12回海外プロジェクト探検隊参加者

渡辺啓介君(都立日比谷高校2年)

田辺雄斗君(桐蔭学園中等教育学校5年)

太田直希君(宮城県仙台第二高校2年)

酒井恵理香さん(渋谷教育学園渋谷高校2年)

佐藤千夏さん(宮城県気仙沼高校2年)

川内彩可さん(都立戸山高校2年)

(2016年2月 3日 11:58)
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