WS編集部より(2)人類の新たな「勉強」

「読売ワークシート通信」のメールマガジンから、記者コラムの一部を紹介します。

 

人類の新たな「勉強」


2020年6月10日

 

 4月の初めに緊急事態宣言が出て以来、基本的には自宅で仕事をしています。日頃は大学で経済の歴史などを講義していますが、授業が遠隔になったので、パワーポイントに音声を吹き込んだりして、授業を「作って」います。

 

 例年の授業に比べて、授業時間は半分ぐらいで済むのですが、慣れていないこともあって、準備に多くの時間がかかります。まあ、それも「勉強」だと思うことにしています。

 

 新型コロナウイルスは世界に被害を与え、日本でも大変な状況に陥っている方々がいらっしゃるので、言葉を選びたいと思いますが、これを機に、私だけでなく、人類は新たな「勉強」をして、社会経済を変革させていくような気がします。

 

 どう変わっていくのか。その一つのヒントが、1970年代の後半に世界を襲った第二次石油危機にあると思います。73年の第一次石油危機の時には日本経済も大打撃を受けたのですが、二次では日本は、一次で受けたショックからの学習効果もあって、被害も小さく、経済が堅調に推移、世界の"優等生"になりました。

 

 何を日本が学んだかというと、これからは「脱・石油」に向けた社会を作らないといけないということでした。国全体で、石油をたくさん使う産業から、少なくて済む加工産業などに重点をシフトしていきました。加工産業の中でも自動車などでは、製品そのものが燃費効率の良い省エネ型になってゆき、結果的には、対応が遅れたアメリカと経済摩擦になりました。

 

 今回のウイルス問題でも、どうやら、今後の経済社会では、「脱・対面」「脱・移動」などが長年にわたっての重要なキーワードになるような気がします。そこに着眼して、積極的に経営戦略を練るような企業が成長していく、そんなチャンスが待っているような気がします。

 

 繰り返して言います。被害に遭われている方々には大変に申し訳のない話です。しかし、そろそろ、この問題に関して、そんな前向きな発想が出てきても良いような気がします。(重)

 


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(2020年10月14日 11:20)
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