沼田 晶弘
第5回 100輪の花(2)
♣2人いればプロジェクト成立
新しくプロジェクトを立てたい時は、朝の会か帰りの会に、起案者が全員の前でプロジェクトの説明をします。例えば「こんなコンテストがあるから応募してみたい」とか。その場で賛同者が1人以上いればプロジェクト成立です。つまり、最低2人いれば承認。プロジェクトは基本的に期限つきで、期限内に達成できれば、花をつけて殿堂に飾ります。
38人のクラスで30以上のプロジェクトが同時進行しているので、多い子は4つも5つも入っているんでしょう。実はボクもよくわかってない。
「ひとつも入ってない子はいないの?」と聞くと、ちゃんと全体をカウントしてる子がいて、「ご心配なく。全員2つ以上入ってます」。おとなしい子は、その場でなかなか参加の手を挙げづらいでしょうが、そういう子は得意分野や特殊技能を持っているので、あとからスカウトされたりしているそうです。 つまり、お互いの特技についてのリスペクトができていることが強みなんですよね、うちのクラスは。
♥大きな達成には「花4つ」
プロジェクトはコンテスト応募だけでなく、ありとあらゆることに及びます。
これは次章でも書きますが、「ティーチャー系」プロジェクトというのがあります。子どもが独自にテーマを立てて、ボクの代わりに授業をするというものです。漢字テストで満点者を増やすプロジェクトや、プロジェクトが達成された時、紙の花を作って飾る作業も、専門のプロジェクトメンバーがいます。あとは挨拶の時の ハイタッチ推進とか、給食を食べる時間を早めるプロジェクトとか、簡単なものも難しいものもあってゴチャゴチャです。
特に輝かしいプロジェクトの達成は、殿堂の一番上に張り出して4つの花がついています。「ナニコレ珍百景」「運動会優勝」「100年文具大賞」「学校新聞コンクール」などですね。
♠リレーでクラブチームを蹴散らす
そんな花4つで異色なのは、「区民体育大会 女子小学生400mリレー2位」。9月に行われた世田谷区区民体育大会陸上競技のリレーがプロジェクトになった。 これを企画したのは、意外なことに、決して脚が速い子ではなく、むしろ走るのが苦手な子でした。
結果として、クラスから女子4人が出場して、59.11秒で2位入賞。何がすごいかというと、出場6チームのうち5チームはスポーツクラブで、学校のクラスで出場したのはこの子たちだけ。クラブチームを蹴散らしての2位なんです。ちなみに、彼女らは「モンスター4」とクラスで呼ばれています。
競技場で大笑いしたのは、他のチームがかっこいいクラブのユニフォームなのに、あの子たちだけネーム入りの学校体操着なんですよ! しかも確信犯。後で聞いたら「クラス感を出したかった」という。かえって目立ってましたよ。
最初にプロジェクトを立てた子も、一緒にトラックで「モンスター4」のウォーミングアップにつきあっていました。その子が起案しなければ、そもそもプロジェクト自体がなかったわけですから、その子の手柄でもあるわけです。
ボクはといえば、観客席で応援してただけ。またしても何もしてないタンニンです。
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沼田先生略歴
ぬまた・あきひろ 1975年東京生まれ。東京学芸大学教育学部卒業後、米インディアナ州ボールステイト大学大学院でスポーツ経営学修了。2006年より東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。現在は6年生担任。生活科教科書(学校図書)著者。企業向けに「信頼関係構築プログラム」などの講演も精力的に行っている。