沼田 晶弘
第51回 ぬまっちに聞け!(1)
このコラムの読者から、沼田晶弘先生にいろいろな質問が寄せられています。お待たせしました。今回から3回にわたり、ぬまっち先生に答えていただきます!
Q 先生になる準備は何をしたらいい?
――まずは、兵庫県の大学生S・Aさんから。来年4月に教員になる予定だそうです。「期待もたくさんありますが、不安も同じくらいあります。4月までに何をしておくべきか、新任として何に気をつけていけばよいかをお聞きしたいです」とのこと。
ぬまっち うーん、これといって思いつかないなぁ......。
――えっ、ないんですか?
ぬまっち だって、まだ子どもの顔も見てないんでしょう。準備といってもなんだろう......? 4月に始まったら、まず子どもの顔と名前を覚えることからスタートしてください。困ったことがあったら子どもに聞けばいいんです。
――ぬまっち先生は初担任の時、緊張しなかったんですか?
ぬまっち あまりしなかったなあ。ボク、先生になったのが遅かったんですよ。このコラムでも書いてきたように、大学を卒業した後アメリカ留学して、帰国して塾の講師などをやって、世田谷小で初担任クラスを持ったのが31歳でしたから。だから、大学を出てすぐに先生になる人に比べて、多少の人生経験は積んでいたんです。
当時の副校長に言われたのが、「絶対、子どもを第一に考えること」。子どもファーストでいけと。なるほどなあと思って、「子どもたちを楽しくさせるにはどうしたらいいかな」と考えたんです。右も左も分からないから、とりあえずやるしかない。
♦体力だけはつけておこう
――でも、やっぱり不安ですよ。みんながぬまっちみたいなタイプではないし。
ぬまっち そうだ、一つアドバイスがあります。
「体力をつけておいてください」
なんだかんだ言って、先生には体力が必要です。最初はきっと、帰りも遅くなると思いますし。経験を積んで仕事を効率化できるまでは、ある程度の体力はあった方がいい。
ボクは最初、副担任として補助教員で入ったんですが、それは、落ち着きのない4年生の教室をサポートするためでした。『ぬまっちのクラスが「世界一」の理由』(中央公論新社)にも書きましたが、縄跳びの「ダブルダッチ」などで子どもに自信をつけさせたんですね。
翌年、正式にクラス担任になる時、先輩に言われました。「副担任時代は加点法で評価されたと思うけれど、担任になると評価が減点法になるからね」と。
つまり、副担任だと、やったことがプラスで評価されやすいけれど、担任はいいことも悪いこともすべて自分のせいになるということです。でもボクは「勝手に加点法」で自分を評価してましたけれどね(笑)。「経験が浅いんだから、できないものはしょうがないじゃん」という前向きの開き直りも必要だと思います。
♣本で勉強するのは善しあしも
――本とか読んで勉強するというのはどうでしょう。
ぬまっち 「新人教師のための○○」「最初にやっておくべき××のこと」みたいな本は逆効果になる場合もあります。ひとつひとつは有益なアドバイスかもしれないけれど、たくさんあると、かえって焦ることになるかも。そもそも、それが全部できたらもう新人じゃない(笑)。
そういう意味では、ボクの本も、「こういう人もいるんだな~」くらいの気持ちで読んでほしい。ムリに全部マネしようと思わないで、まず「一つだけ」マネしてみてください。それができたら二つ目に進む。最初から欲張らないで、できることをひとつひとつやっていくしかありません。
先生になったら、きっとたくさん失敗すると思うけれど、失敗しても立ち直れる精神力をつけておいてください。失敗を失敗のままにしたらただのゴミ。この失敗を成功にできるかもと考えることができたら、失敗も糧になります。
♥「なんくるないさー」でいこう
――そういう精神力はどうしたらつけられますか?
ぬまっち ボクの好きな沖縄言葉のように「なんくるないさー(何とかなるさ)」と考えることです。でもそれだけで終わっちゃダメ。「なんくるないさーだから、何とかしよう」ですね。
★ぬまっちのファイナルアンサー
子どもを見ていないのにいろいろ考えるのは難しいから、いろんな友だちと会って見識を広げておいてください。体力はつけておくように!
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