沼田 晶弘
第52回 ぬまっちに聞け!(2)
先週に引き続き、ぬまっち先生に読者からの質問に答えていただきます!
Q 叱れない私は教師に向いてませんか?
――教員志望の京都の大学院生からです。小学校の教育実習で、休み時間が終わっても騒いでいる子や、友だちを蹴ったりする子をうまく叱って止めることができなかったそうです。担任の先生が静かに厳しく叱ると、子どもたちはしゅんとして言うことを聞きます。「うまく叱れない自分は、教師に向いていないのではないか」と悩んでいます。
ぬまっち ボクは子どもを叱る時は、「本人と周りの子どもたち両方が、その理由をきちんと知っている」ようにします。「これ以上しゃべったら回りに迷惑だから、次にやったら教室の後ろに移動ね」と予告して、それでもしゃべった子には「はい、後ろに行きなさい」ときっぱり言います。本人に「何で?」と聞き返されても、周りの子がその理由を知っている。「それはお前がしゃべってるからだろ!」と。
――なるほど。叱るというより説教や説諭に近いですね。
ぬまっち 担任がその子を説教している時に、周りの子が一緒にビクビクしているようではダメだと思うんです。「あれは叱られて当然」「だよねー」と周りが理解したら、先生が感情に任せて叱っているのではなく、何かを教えようとしていることがみんなにわかります。
♦「お前にはいいところがあるのに」と諭す
――友だちを蹴ったりする子については?
ぬまっち ボクはまずその子に、「どうして蹴りたくなったんだ?」と聞きます。「お前は理由もなく人を蹴るようなやつじゃない。その理由は何なの?」と。
――子どもはよく、意味もなくふざけて蹴ったりするものですよね。
ぬまっち その場合は、「そうか、ふざけて蹴るのは面白いよなあ。でも蹴られたことで痛いやつがいるぞ。お前がやっていいんだったら、ボクがお前にやってもいいってことになるよなあ。面白いことをやるのに、お前はいいけどボクはダメってことないだろ。痛いけどいいか?」
――それはイヤです。沼田先生に蹴られると痛そう(笑)。
ぬまっち それをわからせた上で、こう言います。
「お前にはたくさんいいところがあるのになあ。人を蹴ったらそれ全部消えちゃうぞ。みんなお前の悪いところにしか目がいかなくなるぞ。それってもったいなくないか?」
こう言うと、たいがいの子はわかってくれます。もっとも、それは普段からのボクと子どもとの関係性がベースになっているから、実習生がいきなりは難しいかもしれませんが。
♣騒ぐ子には別の理由があるかもしれない
――授業中、騒いでいる子については?
ぬまっち ボクなら「今はキミがしゃべる番じゃない」ときっぱり教えます。でも、なぜ子どもが騒ぐのかの理由はいろいろだから、もう少し教室全体を見取る(観察する)必要があるかもしれない。子どもが授業に集中できていないということだから、「なぜ集中できないのか」→「どうしたら子どもが集中したくなる授業にできるか」と、ボクだったら考えます。騒ぐ子をその場だけでパワーで押さえつけても、また同じことが起きるだけです。
――「叱れないから先生に向いてない」ということはないわけですね
ぬまっち そう思います。大体、子どもは何回言ってもできないのが普通。大人だってそうでしょう。1回言ってできるようになる人の方が少ないですよ(笑)。何度も何度も、気がついたら教えていくしかない。ボクはめったに子どもを叱りませんが、最初からそういうものだと思っているからかもしれません。
♥ぬまっちだってキレたことがある
――ぬまっち先生はブチ切れたことは一度もないんですか?
ぬまっち ......実は1回あります。担任1年目の3年生クラス。子どもにおちょくられてつい。手は出しませんでしたが、相手の子どもも周りも震え上がってしまった。あの時は甘かったなと反省しています。
ボクはプライベートでは結構短気な性格なんです。ここ数年で、ボクが一番進歩したのは「ディフェンス力」だと思っています。子どもが何かやらかしても、しょうがねえよなあとか、まあいいじゃんと思える「かわし力」ですね。それが若いころからできる人もいるし、ボクのように年を取ってからできるようになる人もいる。人それぞれですね。
★ぬまっちのファイナルアンサー
叱れないから教師に向いてないということはありません。それより、子どもたちが納得できる正しい説教の仕方を心がけてください。子どもがすぐにできないのは当たり前、何度でも言うさ、くらいの気持ちでどっしり構えて!
51<< | 記事一覧 | >>53 |