ぬまっち先生コラム50 ボクのアクティブ・ラーニング論(4)

算数の授業中でも、わからない言葉があったらすぐ辞書を引いてワードバンクに「貯金」。この付せんの量を見て!(9月14日、世田谷小で)

沼田 晶弘


第50回 ボクのアクティブ・ラーニング論(4)


 

♦最後の最後に「隠し味の手」

 前々回に、水辺に連れて行く前に喉を乾かせておくのがボクのやり方だと説明しましたが、実はもう一つ「隠し味の手」があります。(これも、ボクは意識していませんでしたが、担当者と話していて気づいたことです。)喉が渇いた馬は、最初は水をどんどん飲みますが、だんだん飽きて飲み疲れてきます。

 ここでボクは、水に「ちょっとだけ」味を加えます。タイミングを見て、最後の一押しを加えるのです。

 今年1月、6年生のクラスで、卒業遠足のルートを決めるためのディベート勝負を公開の授業研究会でやった時のこと(第24回~26回)。入念にディベートの準備をした子どもたちは、大人がたくさん見に来るというので、さらにハイになっていました。授業が始まる前、ボクはそんな子どもたちにこう言いました。

 

 「おい、今日は100人くらい大人が見に来るらしいぞ。そこで誰かがディベートでスゴイこと言ったら、ギャラリーは感心して『ほほー』とか『おおー』とか言うんだろうなぁ。よしこうしよう。一番大きな『おおー』を言わせたチームが勝ち!」

 

 これは、その時のコラムでは書きませんでした(笑)。ボクが子どもたちをさらに煽り立てているように感じられるかもしれませんが、ボクとしては、むしろ子どもたちの目先を変えさせて、リラックスさせたいという目的がありました。「大勢に見られていることを、逆に楽しめ」と言いたかったのです。これがボクの最後の一押し。また、こういうタンニンの煽りを煽りと承知しつつ、喜んで受け入れてくれる子どもたちでもありました。

 

♣ボクの考え方を総ざらいすると......

 これまで書いてきたことをまとめます。水辺で馬に水を飲ませるための、ボクのやり方は―――

 

  (1)あらかじめ運動させて喉を渇かせておき、

  (2)たくさん連れて行って勢いの力も借りて、

  (3)お腹がいっぱいになったタイミングで、水にちょっと味をつける。

 

 たっぷりの白飯の後にそっと味噌の皿を出す。いちご狩りで、食べるのに飽きてきたころに甘い練乳を差し出す......という感じでしょうか。

 さらに、水辺に連れて行って、

 

  (4)水を飲むことを「一時禁止」する

 

 という方法も追加します。そう、例の「ダンシング掃除」がそれなんですね。

 なんだか今回は、ボクの「考え方」を総ざらいしてしまいました。

 

♥子どもを絶対的に信じられるか

 ボクは馬が大好きなのです。そのため、つい馬の喩えが多くなってしまうことをお許しください。

 25年ほど前、騎手の横山典弘さんが、「ボクのライアンが一番強い」と言ったことがあります。そのころ、武豊騎手のメジロマックイーンも強かった。しかし、横山騎手は愛馬メジロライアンの力を信じて疑わなかった。それは「信用」ではない、絶対的「信頼」です。

 ボクがいつも「このクラスは世界一のクラス」と言う時、ボクは子どもたちに絶対的信頼を寄せています。その力を十分に引き出せないとしたら、それはタンニンとしてのボクの責任だと思っています。

 ある先生が、夜遅くまでかかって、すばらしい授業法、完璧な指導案を作ることができたとします。「これで子どもを理想の学びに導けるぞ......」。でも、翌日、その授業はうまくいかないかもしれません。子どもは思ったような反応を返してくれないこともあるからです。その時、「水を飲まない馬の方が悪いんだ」と思うか、「馬が水を飲みたくならなかったのは自分が未熟だからだ」と思うかで、先生としての資質は大きく違ってきます。

 ボクだって、思い描いた授業がうまくいかないことは、日常ざらにあります。失敗することばかりです。でもボクはその時、「自分のやり方の何かがマズかったに違いない」と考えます。

 だって、ボクたちのクラスは世界一なんですから。それ以外に何の理由があるでしょう?

 

♠学校を楽しくすることが大目的

 まず、先生が子どもの力を絶対的に信じること。信じた上で、どうすれば子どものやる気を引き出せるかを考えること。うまくいかない時は、うまくいくまで何度でもやり方を変えてみること。

 アクティブ・ラーニングはひとつの授業のやり方ではありません。学校を楽しくするための考え方の総称だと思えば、いろいろ新しい可能性が開けてくるのではないでしょうか。やっていることが正しいか間違っているかで、あれこれ悩む必要はありません。正解なんてないのです。ただひとつ、子どもも先生も両方楽しくなければ、アクティブ・ラーニングじゃない―――。これが、今のボクのアクティブ・ラーニング論です。


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(2016年10月17日 10:00)
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