[55]選ばれた人なのに
小学校には委員会活動という特別活動がある。主に5、6年生の高学年が対象だ。 新学期になるとその選出が行われる。代表委員2人、保健給食委員3人、図書委員3人、飼育栽培委員3人...と各クラスに割り振られる。子どもたちは、希望の委員会に立候補して、クラスの選挙で自らの所属する委員会が決まっていく。
人気のある委員会は、すんなりと決まっていくのだが、問題は立候補者の少ない委員会だ。学校の都合で人数は変えられないので、なんとか全委員会のメンバーを選出しなければならない。 つまり、人気のない委員会には、希望の委員会を落選した子どもたちがあてられることになる。 「どの委員会も学校には必要なんだよ」と励まされても、モチベーションは下がったままだ。 それでも毎年、子どもたちは与えられた委員会の仕事を一年間しっかりと行ってくれる。頭が下がるとともに責任感に感心してしまう。
人は自分の意思を持って、その役割を担おうと立候補する。選挙はその志を応援し、その人に自分の思いを託する大事な行為だ。だから、子どもたちもその結果に従い、与えられた仕事を行っているのだと思う。
その大切な選挙で選ばれたにも関わらず、自分の仕事を全うしない大人のニュース(「ガーシー議員除名」2023年3月15日読売新聞夕刊)は、子どもたちにどんな影響を与えるのだろう。子どもが将来なりたい職業の人でもあるのに。
「だから、選挙は大切だ。良く考えて、進んで一票を投じよう」と、主権者教育の教材として扱えばいいのかもしれないが。
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田中孝宏 読売新聞教育ネットワーク・アドバイザー
1960年千葉県船橋市生まれ。元小学校長。「ブラタモリ」にならって「ぶらタナカ」を続けている。職場の仲間や友人を誘って東京近郊の歴史ある地域を歩く。「人々はなぜ、この場所に住むようになったのだろう」と考えると、興味は尽きない。