[54]気球にふさわしい世界へ
「音楽朝会」「音楽集会」と、学校によっては授業以外にも全校で音楽に親しむ定例行事が行われている。 コロナ禍で今後はどうなるかわからないが、全校児童生徒での合唱や合奏はなかなか迫力があり、とても感動したものだ。音楽専科の教員には余分な仕事になってしまうのが心痛むことでもあるが。
教員になりたての頃、音楽朝会で「翼をください」を全校で歌っているのを聞いて、この歌赤い鳥というグループが歌っていたフォークソングだよなあ、とぼんやり思った記憶がある。この曲のように「音楽朝会」「音楽集会」には定番の曲というのがいくつかあった。
「気球に乗ってどこまでも」(東龍男作詞、平吉毅州作曲)も定番曲の中の一曲だ。突然この歌が思い浮かんだのは、「米上空に中国偵察気球 モンタナ州 軍、追跡続ける」(読売新聞2023年2月3日夕刊)を始めとして、最近気球のニュースが多かったからだ。気球は撃墜され、残骸が回収された。気球が世界的な分断の象徴になってしまうのは悲しいことだ。
歌詞を読んでみる。気球が飛んでいくはるかかなたには、思いもしないことが起こると書いてある。続けて、宇宙に気球が飛んでいく様子。そして、そこで夢が叶えられると。この歌詞通り、世界が平和になって、宇宙もひとつになってほしい。
間もなく新学期。コロナ禍が収まり、子どもたちの楽しく歌う声が響き渡る。そんな日が早く来ればいい。そして、みんなで気球にのって平和な世界に旅立って行けるといいなぁ。
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田中孝宏 読売新聞教育ネットワーク・アドバイザー
1960年千葉県船橋市生まれ。元小学校長。「ブラタモリ」にならって「ぶらタナカ」を続けている。職場の仲間や友人を誘って東京近郊の歴史ある地域を歩く。「人々はなぜ、この場所に住むようになったのだろう」と考えると、興味は尽きない。