海外で学ぶ・リレーエッセー[56]オランダ・デルフト工科大学 未知の世界に立ち向かって

大学図書館前の橋本さん=本人提供

大阪府立三国丘高卒、デルフト工科大学(オランダ)1年(執筆時)

橋本 七海 さん

Hashimoto Nanami

 オランダで人生初の海外生活を始めてちょうど一年。この一年間は、「分からない」「できない」ことだらけの一年間だった。例えば、街で話されているオランダ語が分からない、英語の授業についていけない、異文化で育った人たちとの距離の取り方が分からない、などなど。私はずっと、そのような数々の「分からない」「できない」ことに恐れていた。

 

 それらの中でも特に自分ができなくて辛かったことは、プロジェクトの授業だ。

 

 私が在籍するデルフト工科大学航空宇宙工学部では、主に理論を学ぶ講義形式の授業と、講義で学んだ理論を実際に使って何かを製作したりするプロジェクトの授業でカリキュラムが組まれている。1年目に取り組んだ2つのプロジェクトでは、小型プロペラ付き発泡スチロール製の全翼機と、ウイングボックスと呼ばれる航空機の翼の中にある構造を設計した。国際色豊かなクラスメートと実際に手を動かしながら協働する経験ができるこの授業は、私がこの大学を選んだ理由の一つでもあり、入学前から非常に楽しみにしていた。ところが、実際に授業が始まると、入学当初はチームメンバーの英語での議論に付いていけず、授業のたびに私の心は自分の情けなさとチームに貢献できないことへの罪悪感でいっぱいになった。

 

 そんな自分から抜け出せたのは、「理解できなかったからもう一度説明してほしい」「これは一人ではできないから手伝ってほしい」などと言えるようになったときだった。私はそれまで、「できないやつ」と思われることを恐れて、自分が議論に付いていけていないことを他のメンバーに言えずにいた。分からない部分は自分で調べるなどしてどうにかしようとしていた。しかし、言ってみて気づいた。同じチームで議論に付いていけていない人のことを見下すような人はごくわずかで、ほとんどの人は快く助けてくれるのだということに。実際に、私のチームメンバーは皆優しく、私が理解できていない部分を嫌な顔一つせず説明し直してくれた。また、言えるようになって、他の人も他人の力を借りながら徐々に「できない」を「できる」に変えていっているのだと気づいたのだ。

 

 私の大学には、「世の中のことをすべて知っている人などいないのだから、誰だって分からないことがあって当たり前。未知の世界に立ち向かう力をつけるために今ここで学んでいるのだ」という空気がある。私もこの一年間で、「分からない」「できない」は学びのチャンスなのだから恐れる必要はないのだと考えるようになった。これからも、この前向きな気持ちで何事にも挑戦していきたい。

プロジェクトチームのメンバーと橋本さん(後段中央)=本人提供

デルフト工科大学

オランダの事実上の首都ハーグ南郊デルフトにある、同国を代表する国立の研究型工科大学。1842年に王立アカデミーとして設立された。

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(2019年9月24日 12:56)
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