海外で学ぶ・リレーエッセー[61]ハンガリー・デブレツェン大 様々な国の医師免許を取得できる魅力

入学式で

関西学院千里国際高等部(大阪府)卒、ハンガリー・デブレツェン大学1年(20年2月時点)

藤戸 美妃 さん

Fujito Miki

 知人にハンガリーの大学に留学していることを話すと「なぜハンガリー?」と聞かれることがよくある。留学と言うと確かに英米のイメージが強いかもしれない。実際、ハンガリーの大学を選んだことは私にとって大きな決断であり、挑戦でもあった。

 

 私の在籍するデブレツェン大学医学部の英語プログラムには約2100人の学生が世界各国から集まっているが、6年間ストレートで卒業できるのはわずか3分の1に過ぎず、残りは留年や退学を余儀なくされる。1日の学習時間は平日休日問わず大抵10時間を超える。入学後初の筆記試験がまだ辺りが薄暗い早朝7時から始まったことや、医療化学の口頭試験が1時間半にも及んだ事には驚いた。遅刻は無論、体調不良などいかなる理由であっても試験を受けられなければ進級が危うくなるので、健康にはとりわけ気を遣う。

 

 このように課される勉強量は多く、大変なものの、デブレツェン大学の魅力は勉強に集中できる環境が整っていることだ。キャンパス内には東欧の歴史を感じさせる荘厳な図書館や、広大な自然が広がっている。また、私の住んでいる大学内の寮も1人部屋で、かつ週に1度、部屋の清掃をしてくれるため、自然と勉強に集中できる。物価も安く、日本の私立大学医学部と比較すると、生活コスト、授業料の面において負担が大きく軽減される。政府の奨学金制度が充実しているのもハンガリーの魅力である。

 

 そして何よりも私がデブレツェン大学を選んだ最大の理由はこの大学の医学部を卒業すると、欧州連合(EU)各国での医師免許だけでなく、日本の医師国家試験の受験資格や米国の医師免許取得のための試験、USMLEの受験資格が得られるからだ。大学卒業後は米国で頭痛に関する臨床研究に携わり、将来的には日本で頭痛専門医になりたいと考えている私にとって様々な国の医師免許を取得できることは大変魅力的だった。付け加えれば、日本の医学部を卒業してから海外の医師免許を取得することは現時点では困難なのである。

 

 ハンガリーを海外大学の進学先として選択することはまだ主流ではない。しかし、進路選択において、進学先を国で絞るのではなく、自分が大学で達成したいこと、学びたいことに重きを置いて選択することが大切だと思う。

メインビルの前で、ジョギングの途中に=いずれも本人提供

デブレツェン大学

ハンガリーの高等教育機関で1538年創立の、最古の大学。首都ブダペストから200km余り、ハンガリー東部の人口20万人の都市、デブレツェンにある。学生数は30000人を超え、14の学部がある。医学部設立は1912年、医学部英語プログラムが設立されたのは1987年。

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海外留学を目指す高校生に進学支援を行っているNPO法人「留学フェローシップ」のメンバーが、海外のキャンパスライフをリレー連載します。留学フェローシップの詳細は>>ウェブサイトへ。

(2020年2月25日 09:40)
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