東京都立西高卒、米スワスモア大学1年(20年3月時点)
山田 健人 さん
Yamada Kento
「宗教の中に科学はあると思う?」
この質問にどう答えるだろうか。そもそも、考えるまでもない命題として答えさえしないだろうか。
これは「宗教学と食」の授業で教授が投げかけた質問である。私は疑いもなく宗教と科学を別次元のものとして切り離して捉えていた。科学で宗教は説明できず、宗教は科学の枠に当てはまらない。同様の意見が他のクラスメイトからも続いた。しかし、教授はあえて自らの立場を反対の「科学を信用しない」と置き、徹底的に科学派の意見にメスを入れていった。
この宗教学のクラスを取った理由はただひとつである。予備知識もなにもない分野で、最も意味が分からなさそうな授業に首を突っ込んでみたかったからだ。だから宗教学という文脈の中で、世間一般の常識で終わらせがちな議論を一歩とどまって考え直すことは新鮮であった。無知な物事に対し、事前に本や論文を読み、クラスの議論やエッセーでさらに批判的思考を繰り返す毎日。そんな「当たり前」を疑う環境こそがスワスモア大学を選んだ理由だ。
リベラルアーツの意味や位置づけは大学によって様々である。スワスモアではアプローチの多様化と言えるだろう。多くの学生は情熱を捧げる分野や将来成し遂げたいことをもってこのキャンパスに来る。よって、そのために選ぶべき専攻、キャリアパスも自ずと見えてくる。しかし、その選び方は決め付けではないかと大学は問いかける。
他に道はないのか、他の考え方はないか、探求することに分野を越えて学ぶ意義がある。多様な科目が学べる、専攻を最初に決めないなどの制度だけでなく、目的をもった上で、多様なアプローチを形作るためのリベラルアーツなのだ。
専攻はまだ決めていないが、経済学、教育学、コンピューター科学の中での組み合わせを考えている。それぞれを専攻や副専攻として分けることもできれば、一つの専攻として自分なりにデザインすることもできる。いずれにしろ、様々な学習方法の比較検証や教育における情報格差をどう小さくできるかに興味がある。そのために、一見関係のない授業からも、自分が今もつアプローチを疑えるか、大学から挑戦され続けるだろう。
クエーカー教の伝統を引き継ぐ入学式で(右から2番目)=いずれも本人提供 |
スワスモア大学
米ペンシルベニア州フィラデルフィア近郊、スワスモアにある1864年創立のリベラルアーツ・カレッジ。学生数1641人の小規模大学だが、少数精鋭教育で知られる。東京大学と交換留学制度があるほか、外務省は英語の研修先として新人外交官を派遣している。
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