[72]「初老ジャパン」と呼び名の反省
この夏は、パリのオリンピック・パラリンピックで日本勢が金メダルラッシュを見せてくれた。こうしたスポーツの世界大会があると、いつも気になるのが、日本代表チームの呼び名だ。思いつくままに挙げてみよう。
トビウオジャパン(競泳)、ポセイドンジャパン(水球)、マーメイドジャパン(アーティスティックスイミング)、韋駄天スプリンターズ(陸上・男子リレー)、サムライブルー(男子サッカー)、なでしこジャパン(女子サッカー)、フェアリージャパン(新体操)、日の丸セーラーズ(セーリング)など......。
パリ五輪では、総合馬術団体で銅メダルを獲得した「初老ジャパン」が、記憶に残る。還暦を過ぎた我が身には、親近感も湧くネーミングだ。もっとも、快挙を伝えた7月30日付の読売新聞朝刊社会面を読むと、40歳代の選手たちが自分たちでつけたチーム名らしいから、初老というにはだいぶ若いような気がする。ともあれ、ユニークなチーム名をつけるのは、士気を高めるためにもいいのだろうと感じた。
ただ、個人に対してこうした呼び名をつけるのは、慎みたいと思っている。
教師になりたての頃、私はクラスの子どもたちを名前や愛称で呼んでいたことがあった。年齢が近かったせいもあるかもしれないが「嫌な思いをした子もたくさんいただろうなぁ」と反省しきりだ。身近で親しみが増すほど、人は傲慢になってしまう。その、いい例かもしれない。「さん」や「くん」を付けて呼ぶのが正しいと、今は思う。
呼び名は、とても大切だ。呼び名によって、相手は元気になることもあれば、気分を害することもある。時と所と場面をわきまえ、人を元気づけられるような呼び方ができるよう、気を配りたいものだ。
ちなみに、私は担任した子どもたちから「田中ポチ」と呼ばれていた。この呼び名にはいい思い出があるのだが、それはまた改めて書きたい。
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田中孝宏 読売新聞教育ネットワーク・アドバイザー
1960年千葉県船橋市生まれ。元小学校長。「ブラタモリ」にならって「ぶらタナカ」を続けている。職場の仲間や友人を誘って東京近郊の歴史ある地域を歩く。「人々はなぜ、この場所に住むようになったのだろう」と考えると、興味は尽きない。