[71]夏休みを考える
夏休み中、中学生の保護者の約半数が、我が子の「長時間のスマホ・ゲームの使用」や「生活リズムの乱れ」などにストレスを感じているそうだ。約1000人の保護者を対象とした学習塾による調査で浮き彫りになった。8月1日付の読売新聞朝刊に、そんな記事があった。
私は教壇に立っていた頃、夏休み前にかける言葉を、子どもたちそれぞれに合わせて変えていた。子どもたちの生活環境は近年、多様化してきた。長期休暇は給食がないこともあり、家庭によっては生活が厳しくなるとも耳にしていた。「日頃できない経験をしましょう」「家族と楽しんでくださいね」などと、全員に向けて一声かければOKという時代では、もはやない。夏休みを迎える言葉にも気遣いが必要だと感じていた。
さて、こういった夏休み問題の解決には、どうしたらいいだろう? 「夏休みをなくす」。うん、これだ!
校内にエアコンが整備されているのが前提ではある。猛暑の中で頭に浮かんだ「妄想案」に過ぎないかもしれない。ただ、二つのメリットが考えられる。
まず、授業時間を1か月ぶん増やせるため、通年の時間割が緩やかになる。1日に6時間や7時間も授業する日をなくせるだろう。教師と子どもたちが、ゆったり話せる時間も確保しやすい。保護者の頭を悩ませている、夏休み中の我が子の「生活リズムの乱れ」もなくせる。
次に、家族旅行に出掛ける時期が猛暑の夏に集中しなくなる。家族が仕事を休める時期に、子どもたちも学校に届け出て休みを取れる。そんなフレキシブルな制度にすればいい。学校の休みの分類も変える。従来の「病欠」「事故欠」だけでなく、「家族休」などを新設するのだ。
さまざまな「改革」が取りざたされている教育界だが、大きな変化はなかなか起きない。夏休みをめぐる妄想案が検討され始めたら、何かが変わるきっかけになるかもしれない。
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田中孝宏 読売新聞教育ネットワーク・アドバイザー
1960年千葉県船橋市生まれ。元小学校長。「ブラタモリ」にならって「ぶらタナカ」を続けている。職場の仲間や友人を誘って東京近郊の歴史ある地域を歩く。「人々はなぜ、この場所に住むようになったのだろう」と考えると、興味は尽きない。