ぬまっち先生コラム72 さらにぬまっちに聞け!(3)

何を踊ってるかって? あの「恋ダンス」ですよ! ボクも一緒に踊ります(2月3日、世田谷小で)

沼田 晶弘


第72回 さらにぬまっちに聞け!(3)


 

Q ぬまっちはずっと現場でやっていきますか?

――3番目の質問は、現場の教室から教育研究者になった栃木県のK・Aさんから。「自分の教室とその周辺しか変わらないことに限界を感じ、日本の教育全体をよりよくしていくためには、もっと大きいものを根本から変える必要がある」と考えて研究の道に入ったそうです。沼田先生はずっと現場でやっていきますか? 教育と研究の関係についてどう思いますか? という質問です。

 

♦ボクが好きなのはチーム戦なんです

ぬまっち 少し遠まわしな答えになりますが、スポーツに例えさせてください。陸上や水泳など、個人が記録に挑戦する競技は、結果が他の選手にさほど左右されません。一方、バレーボールやサッカー、野球など、チーム同士で戦うスポーツは、個人技がすごくてもチームが勝てるとは限りません。バレーですごいクイック攻撃をしてもブロックされたらそれまでだし、へろへろの山なりボールでも相手の隙を突けば得点できるし。で、ボクが好きなのは後者の方なんです。

 

――運動会リレーにせよ、タッチバスケにせよ、チーム戦で戦法を工夫するのが得意ですよね。

 

ぬまっち 体育だけでなく、現場の授業もこれに似ていると思っています。毎回が一期一会で、同じことをやっても二度と同じ授業にはならない。人間同士なんだから、よくも悪くも予想外のことが起こるのが授業。そこが面白い。

 ボクが教育理論的なものにあまり関心がないのは、それが理由かもしれない。これが医学とか科学の分野だったら、研究や理論から、新しい技術やすばらしい成果が生まれることは分かります。しかし、教育に関しては、誰か別の人が作った理論や方程式を使えば、現場の先生がすばらしい授業ができる......というのとはちょっと違うかなと。どうしても現場なりのアレンジが必要になるでしょうし。

 

♣大ざっぱなボクは理論化が苦手

――なるほど。沼田先生はあくまでライブ重視の現場主義。机の上で、自分の授業をあれこれ分析する方ではありませんよね。

 

ぬまっち 料理を作る時も調味料を量った事がないくらい大ざっぱなんですよ。時々奇跡の味ができるけど、もう1回食べたくても再現できない。また違う奇跡の味ができればいいやと(笑)。だから何かをうまく理論づけできる性格じゃないんだと思う。

 

――でも、このコラムを1年半続けてこられて、アナザーゴールとかクリティカルディスカッションとか、かなり理論化できているところもあるように思います。

 

ぬまっち うーん、確かに理論めいたものはボクの中にもあります。でもそこにこだわってないというのが正しい言い方かな。ひらめき→実践→理論(言語)化→実践→理論修正→実践→理論また修正......の無限のプロセスといいますか、最終ゴールがない。仮説や理論は実践(授業)の中でどんどん変わっていくのが当然だと思っているから。

 

♥「現場」と「研究」の理想の関係

――なるほど。でも、最初の質問に戻りますが、すばらしい授業を他の学校にも広めたいと思ったら、ベースになるような理論づけをある程度した方が、他の先生が自分で取り入れやすいのではないですか。そこに教育研究の役割もあると思いますが。

 

ぬまっち そうですね。質問者の方は現場の教室から研究者になられたそうですから、現場をよくご存知なわけで、授業をよりよくする理論もそこから組み立てられていると思います。ただ、教室は異なる個性、異なる特性を持つ子どもたちの集団で、日本全国に二つと同じクラスはないわけです。やはりそのクラスのことはタンニンが一番よく知っているんですよ。だから、ボクがやっていることを、違う先生が自分のクラスでやったとしたら、まったく違う反応が返ってくるのが当たり前なんです。

 

――どんなにすばらしい理論でも「同じやり方」が二度と通用しないのが教育現場だと。

 

ぬまっち だからといって「教育理論なんて役に立たない」とはボクは思っていません。ボクはボクのやり方を広く知ってほしくてこのコラムを書いているわけだし、ボクの授業をヒントに、誰かがうまく理論づけてくれないかとも期待しています。大学の先生とがっちり組んで、授業研究するような機会がもっと増えればいいとも思っています。

 そこでの真の主役は、ボクでも大学の先生でもなく、子どもたちなんですよ。ボクのクラスの子どもたちは「オレたちが日本の教育を変えるんだ」と真剣に思っていますよ。「こんなに面白いんだから、クリティカルディスカッションみんなやればいいのに!」って。日本の教育を変える力は、実は子どもたちの中にこそあるのではないかと、ボクは本当に思っているんです。


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(2017年3月20日 10:00)
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