沼田 晶弘
第73回 世界一になったキミたちへ
♥ボクの方法はどんな年齢だって使えます
このコラムの読者から最近こんな質問をいただきました。
Q 対象が小学生ではなく18~40代までの日本語教師をしています。私の理想とする授業は沼田先生の行っているものに近いと感じます。ズバリ、沼田先生の授業は年齢関係なく応用が可能でしょうか?
お答えします。もちろん可能です!
なぜなら、ボクは大学での講義や社会人向けのセミナーでも、このコラムで紹介してきた方法とほとんど同じことをやっているからです。ネタとして挙げる具体例はその場で違うかもしれませんが、話している内容は教室と変わりません。子どもを子ども扱いしないところにボクの授業の特徴があると思っています。だから、どんどん応用してみてください!
♣最後の漢字テストと計トレで「新記録」
3月17日は、3年3組の「最後の日」でした。翌18日に6年生の「卒業の会」があって、全校生徒が参加したのですが、3年生のクラスは17日が終業の日。通信簿にあたる「道しるべ」もこの日、ひとりひとりに手渡し、みんなと握手しました。
ボクにとってうれしかったのは、その前日、学年最後の漢字テストと81ます計算トレーニング(計トレ)で、子どもたちがすばらしい成績を出したことです。
ボクたちのクラスの漢字テストは並じゃありません。「ここからここまで習った漢字」が出るんじゃなくて、「これまでに習ったすべての漢字」が対象になります。だって、漢字は普段から使えなきゃ意味がない!
テストでは、ボクが黒板にひらがなで書いた文章を、子どもたちが答案用紙で全部漢字に直していきます。四字熟語もバンバン入っていて、大人だって相当歯ごたえがあるはず。後で数えてみたら84個の漢字が入っていました。3年生までに習った全漢字の約5分の1が1回のテストで出たことになります。それなのに34人中、満点が11人。これまでの最高記録です。
計トレについては、>>第15回のアナザーゴール(4)をご覧ください。9×9=81ますを埋めるのに3年生には1分30秒というハードルを設けているのですが、この日、タイム的には34人全員がクリア。惜しくも2人計算ミスがありましたが、やはりこれまでの最高記録です。やるじゃないかキミたち!
♦胸を張れ、キミたちは世界一になった!
もう1年が過ぎたんだなあ......と思います。
昨年3月に〈5代目〉6年1組を送り出し、4月からこのクラスのタンニンになりました。不安でいっぱい、半分泣きそうな顔の子どもたちに向かってボクは、
「ここを、世界一のクラスにします!」
と、宣言したんでした。
正直、子どもたちは最初、よくできたアンドロイドみたいでした。言うことはよく聞くけれど、自分から進んで動こうとしない。ボクがちょっと目を離すと騒ぎ出す。おとなしくて闘争心がない。
そんな子どもたちは、この1年でボクも驚くほど大きく成長しました。タンニンがいなくても自分で考えて活動を進めたり、時にはタンニンが指示を出す前に動き出せるようになったのです。
そんな子どもたちに、ボクは最後の言葉を贈りました。
先生からみなさんに伝えたいことは一つだけ。まだまだ、みんなやらなすぎる! 4年生になったら、やりたいことをもっとやりなよ!
クラスの空気がピリッと引き締まります。ボクはふっと口調を緩めて、
でも、最後はよく頑張ったと思う。世界一のクラスにするって1年前に言ったけど、「世界一のクラスになった」とボクは思ってます。以前のクラスと比較してじゃないよ。時代が違うから比較しても仕方がない。もし、またタンニンとして会うことがあったら、もっと厳しくなるかもよ~(笑)
1年間楽しかった。ありがとうございました!
子どもたちがみんな周りに寄ってきて、「来年もタンニンやってくれるんでしょう?」と口々に言ってくれるけど、まあこればっかりは、ボクだってわからないのです。
♠新しい春へ――いったんお別れの挨拶
さて、〈6代目〉3年生も無事進級したところで、1年5か月お付き合いいただいた「世界一のクラスですから!」にいったん幕を下ろしたいと思います。書き始めた当初はこれほど長くなるとは思いませんでした。毎週読んでくださる方々の温かい反響が励みになりました。本当にありがとうございました。
ご心配なく、夏ごろにまたここに帰ってくるつもりです。その時には、さらに進化した「世界一のクラス」をお見せできることでしょう。楽しみにしていてください。
最後にみなさんとハイタッチを!
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