[76]謎の四字熟語と「導入」
問題です。「已己巳己」。さて、何と読むでしょう? 失礼しました。クイズの出題者としては、ちょっと不親切でした。「いこみき」と読むそうです。「漢字の感じ」というコラムに、そう書いてありました。「互いに似ているもの」という意味だそうです。なんか納得してしまいますよね。 2025年は「巳年」です。えとの漢字に、こんな四字熟語があったとは。いつも以上に興味が湧いて、コラムを熟読しました。
授業の始まりを、教育界では「導入」と呼びます。教員は、子どもたちの興味が湧くよう、導入にあれこれ工夫をします。 漢字指導のときは、漢字の成り立ちなどを扱います。私はかつて、小学校4年生の導入で「自分の名前の漢字」を取り上げたことがありました。4年生は、10歳になります。当時は20歳が成人でしたから、ちょうど「2分の1成人」に達したところで、命名してくださった方の思いを子どもたちに考えさせようという狙いです。命名の理由に強い思いが込められている場合、子どもたちは自分の名前をとても丁寧に、いとおしそうに書きます。
冒頭のコラムのように知的好奇心をくすぐる問題を導入に取り入れたら、子どもたちはきっと、成り立ちの似通った四字熟語を自分から探し始めるでしょう。導入がうまくいくと、子どもたちはとても意欲的に活動しますから。導入なしで漢字練習を始めるのとは大違いです。
導入が肝心なのは、授業に限ったことではありません。何ごとでも、興味が湧くことからスタートを切れば、行動は自ずと主体的になります。「これからの社会に必要な人材は、指導者ではなく始動者である」という言葉を先日、見かけました。子どもたちが将来の「始動者」に育つよう「導入」していきたいものです。 ちなみに私が今、興味が湧くのは、韓国ドラマです。蛇足でしたね。
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田中孝宏 読売新聞教育ネットワーク・アドバイザー
1960年千葉県船橋市生まれ。元小学校長。「ブラタモリ」にならって「ぶらタナカ」を続けている。職場の仲間や友人を誘って東京近郊の歴史ある地域を歩く。「人々はなぜ、この場所に住むようになったのだろう」と考えると、興味は尽きない。