沼田 晶弘
■追い詰められた3組
第1レースは、まさかの1位―6位。4年3組のポイントは7点。トップのクラスは2位―3位でポイント5点。優勝候補だったはずの彼らは、いきなり窮地に追い込まれました。
以前説明したとおり、リレーの成績は第1と第2レースの総合点で決まります。4年3組が自力で単独優勝するためには、第2レースでCDチームが1位―2位を獲るしかなくなってしまったのです。
状況を理解している子どもたちは真っ青。半分パニックになっています。第2レースで走る子たちが「どうする、どうする?」と、すがるような目をボクに向けてきます。
「まだ終わってない!」とボクは言いました。
子どもたちの不安もわかります。Dチームは安定した強さを持っていますが、Cチームの最高成績は今のところ3位だからです。しかし、ボクまで弱気になるわけにはいかないのです。
「どうするも何も、走るのはキミたちだろ!」
■敗北の味を知る
第2レースの結果はDチーム1位、Cチーム5位。Cチームは健闘してくれたとボクは思います。この結果、4年3組の総合ポイントは13点になりました。そして、第1レースでポイント5点だったクラスは2位―4位で11点。
負けた......。
子どもたちは号泣しています。ボクはその姿を朝礼台の横で見ていました。まだ順位は発表されていません。これから審判係の先生たちによる、ルール違反の確認があるからです。ボクはリレー担当なので、取りまとめと発表役になります。
「第1レースの白組(3組)のアンカー、相手のヒジが入って転んだようですが、どうしますか?」と、ボクは聞かれました。ボクは目の前で見ていたわけではないので、黙っていました。
「そうですね、見てました」と、別の先生。「明らかにヒジが入っていたので、転倒させたほうは失格ですね」
失格したチームは6位降着というのがルールです。その結果、Aチームの着順が繰り上がり、合計ポイント数の順位が入れ替わってしまいました。3組の逆転優勝です。
■優勝しても悔し涙
ボクはレース結果を発表するために朝礼台に上がりました。目の前には4年生全員が整列していますが、白いハチマキの3組の子どもたちはまだ泣きじゃくっています。ボクはこみ上げてくるものを必死に抑えて、結果を読み上げました。
「......したがって、総合順位は、1位、白」
意外な結果だったはずですが、子どもたちはまったく喜びません。それどころか、退場の合図があっても立ちすくんだままです。ボクは朝礼台から飛び降りて、「さあ、帰ろう!」と声をかけねばなりませんでした。
優勝したら、保護者たちの観客席に向かってウィニングランをする予定でしたが、子どもたちにはまったくその気がありません。みんなうなだれて、泣きながら、とぼとぼとクラス席に戻っていきます。それを迎える保護者たちも、やはり大泣きしています。
そんな子どもたちの後ろ姿を見ながら、ボクの目からも、ツーッと涙がこぼれていました。
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