WS編集部より(21)母国での祭典が残したもの

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母国での祭典が残したもの


2021年11月10日

 

 5歳の次男がリビングで地球儀を見ながら鼻歌を歌っています。耳をすませると・・・そのメロディーは「君が代」でした。確かに今夏、テレビの画面から流れる国歌をよく耳にしました。


 せめてパラリンピックのマラソンは見たいね、と話していたのに、家から徒歩5分の沿道に立つことすら制限された異例の大会。母国での祭典は、子どもたちの心に何を残したのでしょうか。


 ちょうど2年前の秋、小学1年だった長男は、ラグビー・ワールドカップの準決勝を観戦する機会に恵まれました。印象に残っていることを聞くと、「大きなおじさんたちがトイレの順番を譲ってくれたこと」。


 想像すると、ほほえましくなります。ギリギリまで我慢してハーフタイムにトイレに行くと、南アフリカから来たサポーターが長蛇の列。日本語が通じない人々に囲まれて青白くなっていく少年を見て、「大きなおじさんたち」が助けてくれたのです。「困っている時に声をかけてもらうのって、本当にうれしいんだね」。長男は当時の感激を忘れていませんでした。


 私にも胸が熱くなった瞬間がありました。埼玉・熊谷で行われた「アルゼンチン―米国」の試合前、スタンドから国歌の大合唱が響きました。声の主は地元の小学生約4900人。スペイン語、英語の歌詞を見ずに歌いあげたのです。試合後のミックスゾーンに現れた選手は、日本人記者の私を見つけると駆け寄ってきて言いました。「感動という力をもらった。子どもたちにありがとうと伝えてほしい」


 スポーツ観戦の場では、一流のプレーを見るだけでなく、応援に声を合わせる一体感や様々な国の人々との交流を通じて、世界の文化や多様性にも触れることができます。一生の思い出となったはずの機会が失われたことは、残念でなりません。


 東京五輪で最も印象に残った場面は? そう長男に聞いてみると、サッカー男子の3位決定戦で「久保選手が号泣していたこと」だと言います。「国を代表して戦うことって、それだけすごいことなんだね。僕も日本代表を目指したい」


 サッカー少年の9歳の心には、大きな大きな夢が残ったようです。(勝)


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(2021年11月17日 15:15)
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