2030 SDGsチャレンジ

じぶんごとからはじめよう

【海プラ問題】若者たちの共感力で生き方を変えよう

保坂直紀

東京大学大気海洋研究所特任教授

 

プラスチックは「永遠のごみ」

 私たち人間は、ほんとうにせっかちな生き物なのだと思う。

 便利な生活のために石炭や石油のエネルギーを使うことを覚えて200年あまり。地球46億年の歴史からすればほんの一瞬ともいえるこの間に、私たちはこれらを大量に燃やし、原料として利用した。

 

 その結果、本来なら地球自身が自然にリサイクルしてくれるはずの二酸化炭素が大気中にたまり続け、石油から作るプラスチックが「永遠のごみ」となって海を漂っている。後始末を考えずにひたすら便利な暮らしを求める私たちの生き方が、地球温暖化やプラスチックごみの問題を引き起こした。

沖縄の白くきれいな砂浜も、掃除しなければプラスチックごみでいっぱいだ(2019年10月筆者撮影)

 

レジ袋有料化の抜け道

 国内ではこの7月からレジ袋が有料化された。だが、国が決めたこのルールには抜け道が用意されていて、無料配布を続けるコンビニや外食チェーンもある。

 「レジ袋なんてプラスチック生産量の数%にすぎないから焼け石に水」「新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるには、使い捨てのレジ袋は有効だ」。有料化にあらがいたければ、その理由などいくらでもみつかる。すっかり慣れてしまったこの便利な生活を、私たちはなかなか捨てられない。これまで通りの無料配布は、そうした消費者心理の反映なのだろう。

 

 抜け道のひとつが、植物を原料とする「バイオマス素材」が4分の1以上まじったレジ袋なら、無料配布を認めるというもの。植物は成長するとき大気中の二酸化炭素を吸収しているから、燃やして二酸化炭素が出てもプラスマイナスゼロとカウントしよう。地球温暖化を進めることはない。そういう理屈だ。

 だが、使ってごみになれば、バイオマス素材が含まれていようとなかろうと、たいした違いはない。海に流れ出れば、ふつうのプラスチックでできたレジ袋とおなじように、ごみとして漂い続ける。プラスチックごみの削減を目指す国のルールだったはずなのに、地球温暖化の進行抑制という別の目的が入りこみ、骨抜きになった。バイオマス素材入りの無料レジ袋を使えば、プラスチックごみ対策に一役買うことになる――。そんな誤解さえ招きかねない。なんのための新ルールだったのだろう。

 

保坂直紀著「海洋プラスチック」(角川新書)

 プラスチックの大量消費が始まって半世紀あまり。私の世代は、その便利さにじゅうぶん浸った。だが、これを放っておけば、プラスチックごみで汚れたこの地球を、子どもたちの世代にそのまま渡すことになる。「まあ、後のことは適当にヨロシク」と言わんばかりに。

 

 いま始まったこの「海洋プラ問題を解決するのは君だ!」プログラムは、汚れた地球を受け渡される世代が企画し、参加する。かれら高校生たちは、怒ってはいない。プラスチックの便利さと有用性は認めたうえで、それでも海を、地球を守ろうとしている。私たちは、これに協力しないわけにはいかない。本来は、私たちの仕事なのだから。

 

 大人がルールを作ると、さまざまなしがらみから抜け道ができる。「そうは言っても現実には......」とばかりに妙な現実路線が幅を利かす。人はきっと、それがルールだからではなく、納得し共感したとき、潔く行動する。若者には、その力がある。プラスチックごみ問題の解決策は、これまでの延長線上にはない。若者たちの新鮮なアイデアに期待し、それを私たちが我が事として引き受けたい。

海洋プラ問題を解決するのは君だ!~高校生×研究×社会問題解決プログラム

【募集人数】高校生と高専生100人

【活動方法】オンライン会議システムなどを使い実施

【活動期間】8月30日~2021年2月(約6か月)

 

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(2020年7月30日 09:30)
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