2030 SDGsチャレンジ

@スクール・学校の取り組み

SDGsトーク 特別編 1/9「教育を変えるきっかけに」

山藤旅聞先生(左)と田中孝宏・教育ネットワークアドバイザー

 国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)を達成するための方策を教育の面から探る「SDGsリレートーク『じぶんごと』からはじめるために」。今回登場していただくのは、新渡戸文化学園小学校・中学校・高等学校(東京都中野区)の山藤旅聞先生です。SDGsを早くから教育に取り入れた山藤先生と、今年3月まで現役の学校長だった田中孝宏・読売新聞教育ネットワークアドバイザーが7月、SDGsに取り組む際にカギとなる意欲などについて意見を交わしました。

 

まとめ:住吉由佳(教育ネットワーク事務局)


 

教科横断型・プロジェクト型で学ぶ

 

田中 SDGsを取り入れた教育に、長年、取り組んでいらっしゃいますね。

 

山藤 予測不可能時代の社会で幸せに生きるために必要な力を育むため、「時間割」や「授業は教室」という枠を取り除いた完全プロジェクト型の学校を1校作って全国に発信したいという思いを、この学校の理事長と共有でき、昨春、こちらに移籍してきました。

 高校の教育デザイナーとして、様々な学校の常識を疑い、生徒にとって自由に活動を選択できる余白のある時間割をフル活用して、未来に必要な学びを生徒とともに考え、最適解を導き出すための教育デザインを実践しております。都立高校での講師契約も残しています。

さんとう・りょぶん

1980年生まれ。東京都立高校・附属中学などで生物教師を15年間務め、2019年度から新渡戸文化小学校・中学校・高等学校生物科教諭。授業やカリキュラムなど高校全体の教育をデザインする高校教育チーフデザイナーと、統括校長補佐を兼任。一般社団法人「Think the Earth」のSDGs for schoolアドバイザー。2017年に未来教育デザインConfeito共同設立。SDGsを取り入れた出前授業や講演を全国で行い、生徒が進める100を超えるプロジェクトを支援。東京・檜原村の耕作放棄地でオーガニックコットンを育てて里山保全に取り組むプロジェクトでは、環境省グッドライフアワード環境大臣賞受賞(2019年、学校部門)

 

田中 教員だけじゃなくて、SDGsを取り入れた教育デザイナーとしても活躍されているのですね。

 

山藤 自分が担当するのは授業だけでなく、行事やカリキュラムなど、学校全体のデザインを見直しています。実際の授業では、プロジェクトベースで学びを動かしています。今年1年の課題を教師から与えるのではなく、本物の社会に接続して、生徒と一緒に今年の課題について話し合っている段階です。

 新型コロナウイルスの感染拡大で子どもたちが学校へ来られなくなりましたが、オンラインを手段の一つにしながら、今、必要な学びについて、生徒たちと共に考えています。学年の枠も必要なさそうな感じです。

 やってみたいプロジェクトを子どもたちに聞くと、実に様々で多様性に満ちています。先生からテーマを絞ると、生徒の本当にやってみたいことを邪魔してしまう可能性もある訳です。この場合、学年は関係ないと思っています。そういうのがだんだん今、見えてきました。

 

 例えば、地域の祭り一つ取っても、食品衛生を考えれば理科や家庭科が入り、人に伝えるためのチラシを作ろうと思ったら美術や国語的な要素が入り、どれくらいの原材料や材料を買い込むのかとなったら算数が入る。

 中高ではもっとレベルを上げ、より地域や社会で活躍する大人と協働を通じて、地域や社会に貢献できるような活動に変えていけば、やってみたいことは学年を超えて共有できるということが分かってきました。コロナ禍で大変な今年ですが、ある意味ではチャンスと捉えて、全職員で何度も議論しながら、ここまで来ました。

新渡戸文化小中学校・高校

小中高・短大、こども園などを持つ新渡戸文化学園(東京都中野区)が運営する私立学校。女子文化高等学院として1927年創立。著書「武士道」で知られる国際連盟初代事務次長・新渡戸稲造氏が初代校長。初代校長が残した「学俗接近」という言葉にもある通り、創立以来、社会と教育のつながりを重視している。

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(2020年8月18日 16:00)
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