SDGsトーク1(中)「意識付け」を考える
田中孝宏・読売新聞教育ネットワーク・アドバイザー
SDGsを教育現場に──。学校の先生方や専門家たちのお話をうかがいながら考える連載「SDGsリレートーク」では、引き続き、読売新聞教育ネットワーク事務局アドバイザーで2020年3月までは東京都江戸川区で現役の小学校長だった田中孝宏さんに聞きました。二回目はさらに詳しい「実践編」です。
(聞き手 吉池亮・教育ネットワーク事務局長)
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──前回のお話では、6年生では「町づくり」という具体的な成果に至るまではいろいろと伺いました。そこの到達するまで、を聞かせてください。
田中 本校では、1年生からプロジェクト型学習ということで、行いました。1、2年生はまずは遊びのレベルから。普段、自分たちが住んでいる町のこととか、遊んでいる公園のことを見直してみようというところから始めています。普段は気づかないこと、たとえば公園にいる昆虫はどのようなものがいるのか、などから入って、環境問題からSDGs的なことに考えを向けるようにしました。子どもたちはそうしてあげることで、自分で気づくようになるわけで、まずはそこから始める感じですね。
──子どもたちの「気づき」を大事にすることですね。
田中 3、4年生にになると、本校の場合は地元のハスの栽培にフォーカスを当てます。蓮田を大切にしようということを学び、あとは地元で栽培している名産の小松菜。農家の方のことを勉強する。地産地消ですね。
そして5年生はとにかく「エコ」をテーマに徹底的にやりました。リサイクルとかそういう観点からエコ活動とはどういうものなのかを網羅的に学び、エコ活動の報告文をまとめさせました。そして、様々な教科を通じてSDGsにつなげることを意識させました。世界遺産の勉強、消費についての学習などもありました。マングローブの保護をしている企業の方を招いて話を聞いたこともありました。その上で、環境は変えることができるのだということ、自分たちの意識がかわれば、世界を変えることができるのだという考えを持ってもらえたと思います。
──目指すところは何でしょうか?
田中 まさに「じぶんごと」。人ごとではなく自分のこととして考えることができるようになることが大切だと思います。まずは自分たちが実際にその問題に触れて、経験を得て、そして考え、アイデアを構成し、発信することができるようになる。これが理想型でしょう。小学6年生までにこれができるようになれば、中学生、あるいは高校生でもっと高度な形でアイデアを構築し、発表するだけでなく、企業や自治体、あるいは国に対しても具体的に「提案」ができるようなレベルにまでなると思います。小学校での取り組みは、そのための重要な第一歩なんですね。
──「じぶんごと」を意識させるための取り組みで印象的なものは何ですか?
田中 いろいろやりましたよ。つる性の植物で強い日差しを遮るグリーンカーテン。雨水タンクの活用。アルミ缶の回収など自分たちの行動が社会に役立つということを意識づけるものが大切ですね。どこの学校でもやっていることでしょうけど、それがSDGsにつながるんだという意識、つながりを持たせることが大事なのだと思います。
──子どもたちにSDGsを理解してもらうためにも、そうしたことは学校だけでなく、ご家庭でも取り組んでいってほしいですよね。
田中 もちろん各ご家庭でも雨水の再利用とか、資源ごみの回収でアルミ缶を分別したりとか、当たり前のことをやっているいらっしゃる方は多いとは思います。が、ご家庭ではやはり、それはどういう意味があってやっているのかということをきちんと子どもにも説明してあげてほしいですね。意識付けというのは子どもにとって、とても大事なことなんです。
──意識付けというのは確かに重要ですね。
田中 新聞を読んでいる人は気づいていると思いますが、社会で起きていることを知るという所作は教育においても非常に重要なことです。SDGsの問題もそうですが、なぜそういうことに取り組まないといけないのか、社会性を身につけることで理解が深まることだと思います。だからこそ、ご家庭でもしっかりと新聞を読んで、社会事象を考える習慣を身につけてほしいと思います。テレビやインターネットの情報は、単純に「知る」ということには役立つのですが、「考える」ということにはなかなかつながらないと思います。これはご家庭だけの問題ではなく、先生方にとってもそうですが......。
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