SDGsトーク 特別編 8/9「未来を変えるとの確信を」
オンラインを活用し、現場から中継する授業も。写真は東京・檜原村から中継する様子(2020年6月)
新渡戸文化学園小学校・中学校・高等学校(東京都中野区)の山藤旅聞先生と、今年3月まで小学校長だった田中孝宏・読売新聞教育ネットワークアドバイザーとの対談「SDGsリレートーク『じぶんごと』からはじめるために」。第8回は、社会の一員としての意識が海外に比べて低い日本の子どもたちの現状に触れながら、どうすれば主体性を持つことができるのか意見を交わしました。
まとめ:住吉由佳(教育ネットワーク事務局)
田中 SDGsの中に主権というのがあって、先生がおっしゃっている主体性だとか、自分からやっていかなきゃいけないというのは、たぶんそこが一番必要なこと。社会活動に関わってくれば、政治活動にも入っていくんだろうと思いますが、そういう子どもたちを育てたい。
山藤 2019年に日本財団が行った18歳の世界アンケートがあって、「あなたは国や社会を変えられると思いますか」という質問に、YESは日本が18%。その次に低い韓国でも約40%で、日本はその半分。ほかのヨーロッパなどは7割、8割にのぼっています。日本の子は、社会や世の中を変えられると思っていないのに、勤勉で一応勉強は頑張っている。だけど勉強は楽しそうじゃない。
日本財団2019「国や社会に対する意識調査」
2019年11月~10月、インド・インドネシア・韓国・ベトナム・中国・英国・米国・ドイツ・日本の計9か国の17~19歳男女(各1000人)に実施した意識調査。「自分で国や社会を変えられると思う」(日本18.3%、インド83.4%、米国65.7%)、「自分を大人だと思う」(日本29.1%、中国89.9%、ドイツ82.6%)など、各国と比べ、社会に対する若者の意識の低さが浮き彫りとなっている。
田中 閉塞感がありますよね。
山藤 田中先生がおっしゃる通り、「何のために」がない勉強。答えが決まって、〇をもらうための勉強になってしまっていて、苦しいんじゃないかなと思います。それが小中高の間に社会で実際に活躍している大人と組んで、実際に活動した結果で世の中が動く瞬間を経験していくと、自分はよりよい未来へと変えていける一員になれると思ってもらえたらいいなと考えています。
子どもが変われば大人も変わる
田中 教える教員の方は、どうなんでしょう。そういう教育をすれば、大人の方も変わるような気がするんです。
山藤 生徒が「やりたい」っていったことを、むげに否定する教員はいないと思うんですよ。生徒があれだけ言ってきたら、何とかしなきゃと思いますよね。だから、学校の先生は、生徒が「自分でやりたい」っていう主体的な行動をし始めている時に、それぞれ得意技でサポートし始めます。自分ではできない場合もあります。そんな時は、学校外の大人をもっと頼ることも大切だと話し合っています。
田中 先生たちも変わっていく?
山藤 はい、変わっていきます。
田中 僕は昔から「外とつなげたい」と思っていたので、いろんな方とつなげてみた。そうすると、面白いのは、一回始めるとつながりが勝手に増えていく。
山藤 そうですね。
田中 小さな地域でさえ、町会長が呼ばれたら、じゃあ商店会の会長も来なきゃいけないな、とか、そういうことが起きてくると思うんです。この学校も、そんな感じでどんどん人が増えていくんですかね。
山藤 やっぱり人が人を呼んできてくれます。そうやって生まれて、徐々に「こうしてほしい」とか「困ってる」という声が聞こえてきて、僕たちが頼られる、子どもたちが頼られた、じゃあ、この解決のためにがんばろう、アイデアを出そうという気持ちが生まれていくのは、早くて3か月とか半年とか、それくらいで徐々に形が見えてくると思うんです。その感覚を先生たちが持ち始めているのが、大きいんじゃないかなあ。
田中 今、一番おもしろいときですね。
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