6月6日読売新聞朝刊掲載「宇宙の謎 迫る探査機」の解説ページです。「新聞@スクール月刊ワークシート」は毎月初旬に連載中!
【質問】金星探査機「あかつき」や新しく計画されている水星探査機など、宇宙に次々と飛んでいく探査機の働きやこれからの開発に期待することは何ですか。あなたの考えを書きましょう。
2014年12月に種子島宇宙センターから飛び立った小惑星探査機「はやぶさ2」が、今月末(6月21日~7月5日頃)、いよいよ小惑星リュウグウに着く予定です。そして、大切な岩石などを持って地球に戻るのは2020年末。なんと6年もの長旅。初代「はやぶさ」の帰還にも感動しましたが、技術力はすごいですね。
【じゅんこ先生の解答例】
宇宙開発が進む中で、人々の生活はたくさんの恩恵を受けています。例えば、「明日の天気は?」「今いる場所はどこ?」・・・通信・放送、測位、気象観測など、現在の私たちの日常生活は、宇宙を利用することで成り立っているものも少なくありません。いずれも地球を周回する人工衛星のおかげです。また、探査機は、惑星などが何でできているのかを探って、太陽系の成り立ちを調べるために役割を果たしています。何年もかけてリュウグウに近づき、生命誕生の謎を探る岩石などを地球に持ち帰る予定の「はやぶさ2」も、金星の大気を観測中の「あかつき」も、そして、間もなく打ち上げる予定の水星探査機「MMO、MPO」も、いずれも無人の探査機です。宇宙の様々な謎に迫ろうと、探査機が活躍しているのですね。
宇宙は謎がいっぱいあるんですね。想定外の事故も起こっちゃうかもしれないし。宇宙への挑戦には危険がたくさん。だから、ヒトを危険にさらすわけにはいかないわけですよ。
その点、高い技術力によって作り出された探査機は、ヒトが行くことのできない所で、ヒトに代わって調査をすることができる、というよい点があるんだと思っています。
アットス君が言うように、「はやぶさ2」の計画責任者である、JAXAの津田雄一さんも、子どものころ、日本が彗星に無人の探査機を飛ばしたニュースを見て、「探査機なら人類が行けない場所にも行ける」と思い続けてきたと言っています。これは、探査機にかける私たちの夢や期待ということでしょうね。
JAXAで研究開発した「はやぶさ2」は、「世界最高の技術で、世界最高の成果をあげたい」という思いがこめられていると聞いたことがあります。「はやぶさ2」の「世界最高の技術」って、そのつくり方にありますね。
「はやぶさ2」は、太陽の熱を遮断する金色のフィルムで覆われています。宇宙空間で太陽光電池パネルを広げると、大きさは幅6m×奥行き4.23mになります。
でも、打ち上げたときは、中学生が並んでも小さく感じるような、幅1m×奥行き1.06mの大きさでした。これで生命の謎を探る往復52億kmの旅をするのです。気が遠くなっちゃいませんか。
52億kmなんて??? イメージが全くわかない距離ですね。速さもすごい。東京と大阪間を12秒で行けるとは。
「はやぶさ2」の開発には、日本のものづくりを支える多くの中小企業や町工場も携わったようです。リュウグウに向かう「はやぶさ2」の行方を、職人さんたちも見守っているんです。
「はやぶさ2」を支えたのは、日本のものづくりの技術力なのですね。誇らしいことです。
ところで、この記事にも書いてありますが、「JAXA」って何の略称ですか。
インターネットで>>JAXAのウェブサイトを調べてみましょう。JAXA(ジャクサ)は、英文名称「Japan Aerospace Exploration Agency」の略称です。日本語の正式名称は「宇宙航空研究開発機構」です。2003年10月1日、大型ロケットや人工衛星、宇宙ステーションなどの開発を中心に行ってきた宇宙開発事業団(NASDA)、宇宙や惑星の研究を中心に行ってきた宇宙科学研究所(ISAS)、次世代の航空宇宙技術の研究開発を中心に行ってきた航空宇宙技術研究所(NAL)の3つの機関が統合して新たに誕生しました。この統合によって、宇宙航空分野の基礎研究から開発・利用に至るまで、一つの組織で一貫して行える体制ができました。
もっと調べてみたら、JAXAではどんなことをしているのか、次のように書かれていました。
(1)人工衛星・探査機での貢献 (2)宇宙環境の利用 (3)地上と宇宙を結ぶ輸送システムの研究開発 (4)宇宙科学・惑星探査の研究 (5)航空技術の研究 (6)基盤技術の研究 (7)産業振興 (8)国際協力 (9)教育活動 (10)広報活動 (11)他、宇宙航空分野を支える技術の研究開発
(JAXAウェブサイトより)
宇宙航空研究開発機構(JAXA)のサイトで、「人工衛星・探査機による貢献」のページを見てみましょう。ここには、このようなことが書いてありました。
~人工衛星・探査機は、宇宙利用や宇宙科学研究の分野が目指すミッションを実現するための《手段》であり、《ツール》です。大きなシステムの中の《一つの(役割)》とも言えます。~
このページには、運用中・開発中・運用終了の「地球観測衛星」「通信・測位・技術試験衛星」「天文観測衛星」「月・惑星探査機」が紹介されています。どのようなものがあるか、調べてみるといいでしょう。私たちの生活や社会のニーズを踏まえて、次々と開発・研究されていることがよくわかります。アットス君は、いろいろな探査機に、どんなことをしてほしいと思いますか。
宇宙開発というのは、科学的な謎を解いたり、生活を便利にしたりするためにあるのだと思うのだけれど・・・。月を目指す競争が過熱しているのは、天然資源が埋蔵されているのではないかと真剣に議論されているからと聞いたことがあります。また、火星にも資源が眠っているとされ、今、「宇宙利用」の考え方が重視されているそうです。
小惑星の試料を持ち帰る探査計画は、アメリカでも進んでいるそうです。はやぶさ2で得られる予定の「リュウグウ」の試料の一部は、交換して分析することになっています。日本とアメリカの両者の協力で、太陽系の謎に迫ることができることに期待したいですね。
そうそう、6月3日の夜に、大きなニュースが入りましたね。
「おかえりなさい、金井さん!」ですね。国際宇宙ステーション(ISS)に約半年間滞在していた日本人宇宙飛行士の金井宣義さんが、6月3日、ロシアのソユーズ宇宙船に乗って地球に無事帰還しました。よかった、よかった。
金井さんの元気な姿を見て、安心しましたね。「体が重い。あらためて地球の重力を感じた」とも話していましたね。ところで、金井さんは、今回の宇宙滞在で、どのようなことをしていたのですか。
宇宙服姿でISSから船外に出て、部品を交換する作業をおこなったり、ロボットアームを操作してISSに生活物資などを届けるアメリカの無人補給船をキャッチすることに成功したりしました。
また、金井さんは医師なので、マウスの飼育や薬の開発に役立つ医学実験をしたそうです。どんな実験をしたのかなあ。これからの報告も楽しみです。新聞にも載りますよね。
難しい活動が展開されていたのですね。宇宙開発の進歩はすごいなあ。金井さんは「これから多くの人が宇宙に行く先駆けとして貢献できた」と振り返っています。
アットス君は、宇宙開発の未来について、大事なことって何だと思う?
金井さんが滞在していたISSには、アメリカやロシアの乗組員がいました。皆でスクラムを組んで作業を進めていたのです。つまり、国際協力がなければ、宇宙開発の未来はないと思います。
月だって、火星だって、その探査の成果を、世界の人々のために共有することが大切だと思うんです。「はやぶさ2」のプロジェクトは、宇宙開発で世界のリーダーとなる日本の将来が見えるようで、とっても楽しみです。
【参考記事】
●「再び 宇宙へ挑む」(2014年11月28日/読売中高生新聞)
●「はやぶさ2打ち上げ」(2014年12月3日/読売・夕刊)
●「はやぶさ2 52億キロの冒険」(2014年12月4日/読売・朝刊)
●「はやぶさ2『日の丸』結集」(2014年12月4日/読売・朝刊)
●学ぶ 育む わかるサイエンス「はやぶさ2 新たな挑戦」(2014年12月7日/読売・朝刊)
●「6年かけ往復52億キロ」(2014年12月11日/読売KODOMO新聞)
●「顔・小惑星探査機『はやぶさ2』の新たな計画責任者」(2015年05月21日/読売・朝刊)
●「太陽系誕生の謎に迫る旅」(2015年12月12日/読売KODOMO新聞)
●「はやぶさ2『リュウグウ』まで1年(2017年7月20日/読売・夕刊)
●「金井さんISSへ」(2017年12月21日/読売KODOMO新聞)
●サイエンスView「2024年発 5年の旅路」「火星の月 新型で探索」(2018年04月15日/読売・朝刊)
●サイエンスView「太陽系の謎 解明の旅」「はやぶさ2 小惑星を撃て」(2018年6月3日/読売・朝刊)
●「金井さん帰還」「白いご飯食べたい」(2018年6月4日/読売・朝刊)
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