「東京2020 人も食も多様」 月刊ワークシート vol.22

1月8日読売新聞朝刊掲載「東京2020 人も食も多様」の解説ページです。「新聞@スクール 月刊ワークシート」は毎月初旬に連載中!


【質問】(4)選手村の食事が果たす役割について、記事を参考に、あなたの考えをまとめてみましょう。


 

選手村には、「メインダイニング」「カジュアルダイニング」の他に、テイクアウトできる軽食を提供する「グラブ&ゴー」というコーナーもあるんですよ。選手たちは、自由にいろいろな食べ物が楽しめるのです。充実していますね。

 

ところで、アットスト君、選手村の「食事」ってどんな役割があると思う?

 

記事にも書いてあるけれど、食事は、選手の体調を整えて、競技に最高のコンディションで臨めるようにするもの。つまり、大会の成績にとっても関係してくるということですね。それに食べなきゃ、元気が出ないものね。

 

「食事はからだづくり」かな。そういえば「勝ちめし」なんていう言葉もありましたね。

 

それに、外国の選手たちは、日本で、母国の食べなれた味が楽しめたら、ほっとするでしょうし、元気がわくでしょうね。

 

そう、絶対にリラックスすると思うよ。だから、選手村の食堂には、各国の定番料理が並ぶんですね。

 

今回、世界の人たちに伝えたいこと、それは、東日本大震災からの復興です。そういう思いを込めて、選手村での食材には、被災した地域のものを使うことも期待されているんですよ。

 

「食事」はとっても大きな役割があるんですね。そう考えると、アスリートだけでなく、だれもが、毎日の食事に気を配っていきたいですよね。

 

 


【質問】(5)選手村で選手に食べてほしい、あなたのおすすめメニューを紹介しましょう。

【質問】(6)あなたの気になる選手が住む国の食文化を調べてみましょう。


 ワークシートの問題を考えながら、「食」の力、知らせたい日本の自慢の味、外国の食文化について触れてみましょう。そのために、選手村の食堂の裏側を覗いてみましょう

 

アットス君、「東京2020みんなのフードプロジェクト」っていうのを知っている?

 

昨年の8月に、選手村で出す食事のメニューを一般に公募した企画のことですね。

 

審査に通った5つのメニューが選手村に設置される「カジュアルダイニング」に並びます。応募したメニューを、世界の選手たちが食べてくれるなんて、素敵な話じゃないですか。

 

東京都豊島区にある女子栄養大学短期大学部の学生たちは、自分たちが考えた「野菜たっぷりカレー」のメニューを応募すると、新聞に書いてありましたね。選考に残ったかなぁ。

 

このカレーを作った学生が、「栄養価の高い夏野菜とビタミンB1を取れる胚芽米を使ったのがポイント。食べた選手に幸せな気持ちになってほしい」と言っていましたね。

  

ところで、この企画は、スポーツにはあまり関心のない人たちに、東京2020を楽しんでもらう方法はないか、ということを考えたことが発端になったそうですよ。

 

参加型の企画って、楽しいなあ。確かに関心度がぐ~んとアップする。

 

東京2020の楽しみは、観戦だけではないということです。そして日本の味を、世界の人々にたくさん知ってもらえるチャンス。これも東京2020のレガシーになりますね。

 

レガシーと言えば、1964年の東京五輪で考え出されたのが、冷凍食品の活用だったそうですね。

 

そうです。今では当たり前に活用している冷凍食品ですが、東京五輪をきっかけに、裾野を広げて進化したのです。

 

なんで、オリンピックで冷凍食品なの?

 

それは、食材の確保が課題だったからです。当時、世界から5000人以上の選手が集まり、彼らの胃袋を満たすために生鮮品を調達すれば、価格が上がり、庶民の食卓に大きな影響がある、と思ったのです。そこで考え出されたのが、冷凍食品の活用だったというわけです。

 

日本冷蔵(現ニチレイ)が協力し、選手村食堂の料理長だった帝国ホテルの村上信夫シェフらが試行錯誤を続けて活用に至ったというのですね。

 

今ではいろいろな種類のおいしい冷凍食品がたくさんあって、とっても便利です。そのきっかけが、1964年の東京オリンピックだったんですね。驚いた!

 

ところで、食事をするときには、スプーンやフォーク、ナイフが必要ですね。洋食器産業で有名なところはどこでしたっけ。

 

新潟県の燕市!現在、金属洋食器産業のシェアは、燕市が国内の9割以上を占めているのですよね。

 

そうです。「燕カトラリー五輪選手村へ」という記事がありました。燕市や地元の業界団体は、2013年に東京五輪の開催が決まると、プロジェクトチームを結成し、関係諸機関に働きかけてきたそうです。このカトラリーは、全体が鏡面加工され、表面には国の特別天然記念物のトキの羽をイメージした曲線をあしらい、裏面には桜の花が散りばめられているそうですよ。

 

うわぁ~、とっても日本らしい。これを世界のトップアスリートが使ってくれることで、日本の高い技術がアピールされるのですね。

 

もう一つ大事なこと、「食」には当然、食材の安全性を確保しなければなりません。選手村でも、厳しい安全管理が行われます。

 

そこで、東京2020を前に、食材の安全性を保証する制度「GAP(ギャップ)」への関心を高める取り組みが進んでいるのですよ。

 

「GAP」って何ですか?

 

「Good Agricultural Practice(よい農業の実践)」の略。食品安全や環境配慮などの基準を満たした生産者に与えられる認証制度を言います。

 

東京五輪の選手村の食材は、GAP認証を取った生産者から調達しなければならない、ということですか?

 

そうなんです。農薬の使用基準とか衛生管理などのチェックをして食材の安全確認をするしくみです。GAPは、2012年ロンドン五輪や16年リオ五輪の選手村で食材として調達される条件となったのです。今回も条件になったことで、日本でも取得する農家が増えました。

 

全然知りませんでした。

 

私たち一般の消費者には、あまり知られていないのですね。北京、ロンドン両五輪のバドミントン日本代表で、東京五輪組織委員会の飲食戦略検討委員の 池田信太郎さんは、「日本人は食が安全なものだと考えがちで、安全管理の取り組みは国際的な動きに後れをとっていると感じる。東京五輪を食の安全を考え直す大きなチャンスととらえ、盛り上げていきたい」と話しています。

 

東京2020大会は、いろいろな面を見つめ直すチャンスにもなっているんですね。

 

はい、そのとおり。今、日本の料理の世界で関心が高くなっているものに、「ハラールフード」があります。選手村では、こうしたことへの気配りも万全です。

 

イスラム教徒は、豚肉やアルコールが禁止ですね。

 

選手村では、そうした人々にも和食を楽しんでもらうために、料理酒やみりん、保存料としてアルコールが添加されている醤油や酢にも配慮しているのだそうです。

 

「イスラム教」「ヒンズー教」「ユダヤ教」「ベジタリアン(菜食主義)」「ビーガン(完全菜食主義)」など、宗教や思想信条による食の制限がある方たちへのおもてなしをどう工夫するか、選手村ではそれぞれに心を配っているんですね。

 

【参考】

「東京2020大会における飲食提供に係る基本戦略」公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(2018年3月)

【参考記事】

■《連載「和を食す 2020へ」1》「東京の食材 世界に向けて」(2018年10月10日 読売・朝刊)

■「選手村や会場でアピール」(2018年10月10日 読売・朝刊)

■《連載「和を食す 2020へ」2》「安全の『お墨付き』大会遺産に」(2018年10月11日 読売・朝刊)

■《連載「和を食す 2020へ」3》「食材イスラム教に配慮」(2018年10月12日 読売・朝刊)

■《連載「和を食す 2020へ」4》「衛生管理に国際標準導入」(2018年10月13日 読売・朝刊)

■「選手村メニュー公募スタート」(2019年8月8日 読売・夕刊)

■「選手村でメニュー採用を」(2019年8月16日 読売・朝刊・都民版)

■《1964MONO図鑑》「冷凍食品」(2019年8月25日 読売・朝刊)

■「燕カトラリー五輪選手村へ」(2019年8月31日 読売・朝刊・新潟版)

■「五輪で採用 食材の安全認証 GAP」(2019年12月11日 読売・朝刊)

 

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(2020年1月 8日 09:00)
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