高円宮杯 第75回 全日本中学校英語弁論大会 上位入賞者とスピーチ全文

高円宮杯を受け取る谷口さん(24日、東京都千代田区で)

 高円宮杯第75回全日本中学校英語弁論大会の決勝大会が2023年11月24日、東京都千代田区の有楽町よみうりホールで開かれ、各賞が決まりました。上位入賞者は以下の方々です。クリックでスピーチ全文をご覧いただけます。(敬称略)

>>大会ウェブサイト

 

上位入賞者

1位 ● 谷口 裕里さん

福島県・郡山ザベリオ学園中学校

「Everyone Is Different, Everyone Is Wonderful(みんなちがって、みんないい)」

 

2位 ● 家坂 絹穂 さん

群馬県・高崎市立高松中学校

「Manga: Japonisme 2.0(マンガ: ジャポニズム 2.0)」

 

3位 ● 井上 惣一朗 さん

愛知県・春日井市立鷹来中学校

「Stepping into Someone Else's Shoes(相手の立場に立つ)」

 

4位 ● 野村 真優 さん

東京都・筑波大学附属中学校

「A Passport to an Unknown World(未知の世界へのパスポート)」

 

5位 ● 嶋﨑 文乃 さん(ワールド・ファミリー賞も受賞)

宮城県・聖ウルスラ学院英智小・中学校

「I Am Greatly Appreciative of the Time You Have Taken to Consider the Words I Have Experienced at This Venue Today(本日のこの場で私が申し上げた言葉について皆様が真剣に思慮して下さったことに心から謝意を表します)」

 

6位 ● 伊藤 香一 さん

北海道・北海道教育大学附属札幌中学校

「AI, with You and I(AIと人に必要なモノ)」

 

7位 ● 奥井 千寛 さん

福岡県・福岡雙葉中学校

「Living with Depression(鬱との戦い)」

 

1位の谷口さんのスピーチを解説

 心に届くスピーチの秘密はどこにあるのか。今大会1位の谷口さんのスピーチ英文を、東進ハイスクール・東進衛星予備校英語科講師の土岐田健太さんに解説してもらった。


 谷口さんのスピーチは「構成力」「言い換え力」と「反復によるリズム」がキラリと光ります。

 冒頭の問いかけには引きこまれます。Every day, do you think about where you are from? I'm Korean. I always think about that.(毎日、みなさんは自分がどこから来たのか考えますか。私は韓国人です。私はいつもそのことについて考えています。)これは「アイデンティティー」のテーマを等身大で伝えようとするスピーチです。差別という問題を自分事で捉え、皆が相手に敬意を払う社会を作ろうという切実なメッセージが込められています。

 前半は谷口さんの経験をもとに展開されます。It doesn't matter where you are from.(あなたの出身地は関係ない)という友人の言葉に励まされながらも、自分は他の人とは違うのではないかという苦悩があるのです。さらに友人との衝突の実体験が展開され、自分のアイデンティティーや他者を尊重することの意味を考えるようになった経緯にも触れられています。

 「言い換え力」も印象的です。スピーチのキーワードはidentity(アイデンティティー)やindividuality(個性)といった高度な言葉ですが、自然な言い換えが聞き手を引きつけます。例えば、アイデンティティーの言い換えとしてwhoを使った表現力が素晴らしいです。There is no need to hide who you are.(自分がどういう人なのかを隠す必要はないのです。)という一文の中にwho you are「自分とは何者か」という表現を使っています。

 スピーチの最後は三つのフレーズの反復をうまく活用しています。I believe that everyone deserves to be loved, respected and accepted.(私は皆が愛され、尊敬され、受け入れられるのにふさわしいと強く思います)と過去分詞が三つ並べられています。これはアメリカ大統領の名スピーチにも見られる、相手の心にメッセージを届けるのに効果的な伝え方です。

 最後の一文も見事です。Together we can create a society where everyone can live their life as they are and be celebrated.(共に我々は皆が自分らしく生き、称賛される社会を作ることができるのです。)と、weを用いて一体感を持たせる締めくくりになっています。スピーチのタイトルも、金子みすゞさんの詩をほうふつとさせ、個人の意識の変革こそが差別のない社会の実現に必要だと気づかされるのです。アイデンティティーの葛藤と個性の素晴らしさという気づきを、社会への問題提起まで昇華させた見事なスピーチだと思います。

土岐田健太(ときた・けんた) 東進ハイスクール・東進衛星予備校英語科講師。「将来どこでも通用する英語」をモットーに、中高生から大学生、社会人対象の講座でも絶大な支持を受けている。英検1級・TOEIC990点満点取得。著書は『土岐田のここからつなげる英文法ドリル』や『英作文トレーニングドリルTransform』(Gakken)など多数。

 

【主催】読売新聞社、日本学生協会基金

【後援】外務省、文部科学省、都道府県教育委員会ほか

【特別協賛】東進ハイスクール・東進衛星予備校

【協賛】日本テレビ放送網、ぺんてる、ワールド・ファミリーほか

 

(2023年12月 6日 16:00)
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