「勇気もらった」女子生徒たちの発見 ~順天堂大・天野篤教授による医療プログラム(4)

真剣な表情で手術を見守る女子生徒

 天皇陛下の執刀医として知られる天野篤・順天堂大学医学部心臓血管外科教授(59)と同科は今夏、医師を志す高校生8人を受け入れ、早期医療体験プログラムを行った。8人は読売新聞教育ネットワーク参加校の生徒で、プログラムはネットワーク活動の一環として行われた。生徒たちは二人一組で3日ずつ、天野教授が率いる医療チームに早朝から密着し、順天堂医院(東京都文京区)の心臓手術に立ち会った。手術後の患者と面会もし、「命を預かる覚悟」「なぜ医師になりたいのか」を考えた。


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病棟医長は女性!

 プログラムに参加した8人のうち5人は女子生徒だ。5人は、教授の下で奮闘する女性たちから勇気をもらった。

 市川高2年・安藤実さんはプログラム最終日、70代男性の腹部大動脈瘤に人工血管を埋め込む手術を見学した。

 医療チームの4人の医師うち、最初にメスを入れたのは嶋田晶江医師(38)。入局13年目、入院や病床調整、看護師などとの窓口も担う病棟医長だ。

 

術前会議で症例を説明する嶋田医長(左から2人目)

 

 4人は連携しながら、もろくなった大動脈に人工血管を挿管、再び動脈を縫合していく。男性医師や看護師に指示を出し、4時間近く立ち続ける嶋田医師の姿に安藤さんは思った。「体力的に厳しいはずなのに、とてもエネルギッシュに仕事をしている。過酷な外科でも女性は活躍できる」。

 嶋田医師の真横で手術に立ち会う小児外科の女性医師にも目を奪われた。「子供が1人いて、現在もお腹に赤ちゃんがいる。それでも資格取得のため学び続けている」。家庭との両立が可能な環境が整いつつあることが分かり心強かった。

 初めて手術室に入った際、女性の社会進出が進んでいると実感した女子生徒もいた。「麻酔科医2人のほか、器械出し担当と外回り担当の看護師も女性。医療チームの半数が女性だ」

 

「あきらめること 一つもない!」熱いメッセージ

手術中、麻酔科医に質問する女子生徒

 

 「結婚して子供がほしい。でも目指す医師は忙しそうで、子育てどころではないのでは...」

 8月中旬、プログラムに参加した2人の女子生徒が抱いていた不安だ。1人は臨床を、1人は出産を諦めるべきではないかと葛藤していた。

 午前の手術が終えた嶋田医師は、そんな生徒たちに自らの体験を語った。

 「私は結婚していて子供がいる。出産して現場に復帰する際は、教授が色々と相談に乗ってくれ、当直の回数を減らすなど助けてもらえた。夫と両親の支えも必要だけれども、こうして心臓血管外科医として働いている。女性だからといって諦めることなど一つもない」

 昔と異なり、女性の外科医が増え、互いに助け合えるようになっていると説明しながら2人を励ました。

 「子供の運動会にも出られますか?」

 そんな疑問にも、自ら工夫し、医局の理解を得られれば可能だと伝えた。

 「人生は一度だけ。どん欲に挑戦してほしい」。嶋田医師のメッセージに、2人は将来への道が開けるのを感じた。

 

■ここに注目!

順天堂医院の外科系10科で働く常勤女性医師数は平成23年度からの5年で、7人増えて27人となった。この間、男性常勤医は2人増えただけだ。また、この間に産休を取った9人のうち8人は育児休暇も取っている。

 


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(2015年9月24日 10:00)
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