「コロナ」と言われて...【新型コロナ 学生リポート】(4)

アイルランド・ダブリンの街。感染者が出るまでは、コロナの問題は「他人事」のようだった

 全世界的な新型コロナウイルスの流行は、社会・経済に大きな混乱を与えています。私たち大学生にも、サークル活動の自粛や卒業式・入学式の中止、そしてアルバイト収入の減少など、たくさんの影響がありました。キャンパススコープでは、3月上旬から、メンバーを中心に多くの大学生の声を集めました。いま、私たちの生活に何が起きているのかをリポートします。

 

ブレグジットからコロナへ

 

 「コロナ!!」。アイルランドの住宅街で声をかけられたとき、まさか自分のことを言われているとは思いませんでした。この日、同国内で初めてのコロナウイルス感染者が出たことを、現地のニュースが報じていました。

 

 2月2日から3月2日にかけて、短期留学でアイルランドを訪れました。アジアから遠く離れたアイルランドでは、コロナウイルス騒動はまるで他人事。現地の学生も僕に「日本は大丈夫?」と気を配ってくれるほどでした。私がアイルランドに到着した2月2日は、ちょうど英国のEU離脱(ブレグジット)成立の翌日。街では、英ジョンソン首相の風刺画を持った若者に絡まれることもありました。ロンドンの空港の売店、アイルランド入国後に立ち寄ったコンビニでも、新聞はEU離脱で大騒ぎでした。感染者が拡大する中国の様子は記事になっていたものの、現地の新聞では、12ページ目までめくってやっと紹介されている程度。文化の違いでもありますが、マスクをしている人は誰もいませんでした。

 

 2月28日、一人目の感染者が出てから事態は急変しました。イタリアからの入国者でした。その日を境に、テレビもラジオもトップニュースは連日コロナの話題一色。「Killer Virus」とセンセーショナルな見出しを挙げる新聞もあり、間違った憶測まで出回るようになりました。街中では、私を睨むような視線を感じることもあったし、露骨に私を避けるような仕草を表す人もいました。

センセーショナルな見出しでコロナの話題を報じるアイルランドの新聞

 日本に帰国してからは、マスクの買い置きがあまりなかったこともあって、家にいることが多くなっています。国内外のニュースを追っていると、3月12日には「アイルランドで初めてのコロナウイルスによる死者が出た」と報じられました。現地のスーパーでは、日用品やパンが、買いだめのせいで品薄になっているといいます。欧州全体を見ても、サッカーのリーグ戦開催中止、ライブツアーのキャンセルなど、多大な影響が及んできているようです。

 

 WHOのテドロス事務局長が「パンデミックの中心は欧州」と述べたように、深刻な感染拡大の主戦場は、欧州になりつつあります。小中学校が一斉休校し、イベント自粛の真っただ中にある日本に帰国した今、欧州の混乱ぶりを見て思います。なぜ、東アジア諸国の前例から、この混乱に備えてくれなかったのだろうか、と。

(東洋大学・佐藤道隆)


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(2020年3月19日 12:08)
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