18.沈黙は怖いか
昭和女子大学3年 樽谷三奈
私は最近まで、友人と映画を見に行くと、上映後、「いやー、良かったよね。きょうはありがとう。また行こうね!」と切り出し、その場で解散することが多かった。相手はいつもこの流れになると知っているためか、気にした様子もなく去って行った。
私は、会話が続かず、沈黙で気まずい雰囲気になるのが怖いのだ。別の友人と食事をしたときも、時間があるのに、「東京を知らなすぎて行くところがないよね(笑)」と言って帰ってしまったことがある。
だが昨年末、ジャニーズ系のアイドルが好きという共通点がみつかった同級生と、休日に東京・原宿に買い物に出かけたときは、いつもと違った。
買い物とランチをした後、私は「解散」を言い出さなかった。彼女に六本木方面まで「歩こう」と誘われ、それに応じたのだ。
一緒に歩きながら、好きなドラマや映画について話した。互いに黙っている時間が圧倒的に多かったが、私は怖さを感じなかった。食べ物の好みや性格も似ており、気が合うとわかった。私たちは、また遊ぶ約束をして別れた。
彼女とは、授業の休憩時間に話す程度の仲だった。もっと親しい友人たちに比べ、「沈黙して気まずくなってもいいや」という思いがあったから、最後までつきあったのかもしれない。
でも、私は、沈黙の間にときどき交わされる、短い、とりとめもない会話だけでも、価値があるのだと気付いた。沈黙は友人関係を壊すのでなく、築くものなのだ。
私は沈黙が怖くなくなった。
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