3.「何者」でもない私
東洋大学2年 高見澤楓
「あなた、何者なの?」
先日、同級生にそう聞かれた。
私は大学で経済学を勉強している。だが、高校時代は、自分の好奇心から脳科学や法医学も学んでいた。
美術系の大学に進みたいと考えたこともあり、今はイラストを描くのが趣味でもある。
「何者なの?」と質問されたのは、そんな私自身のことを雑談で話していたときだった。
脳科学や法医学を勉強していたことは、今の学業とは無関係だ。趣味のイラストも、直接は結びつかないだろう。相手はそのことに違和感を覚えたのかもしれない。
以前、大学の講座で、隣に座った他学部の学生に同じような話をしたときも、「あなた、何者?」と言われたことがある。
そう聞く人たちは、私がどんなタイプの人間なのか、例えば「経済学を勉強する人」といった決めつけをしたい人たちなのだと思う。
でも、「何者」でもない私は、他人にも自分にもとらわれずに行動している。脳科学や法医学の学習で医療への関心が高まり、災害時の救命救助に役立てる資格を取得した。
イラストも、大学で「プレゼン資料の挿絵を書いてほしい」などと、頼りにされることがある。
冒頭の質問に、「私はヒトだよ」と答えた。本当は、「曲者」とか「変人」とか言ったほうが、相手は満足したかもしれないけれど......。
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