32.今、できること
昭和女子大学2年 木村碧(あおい)
今年4月2日、私は、近所に住む祖母と、桜の花が咲く道を散歩していた。新型コロナウイルスの緊急事態宣言が出る直前で、「これからはあまり出歩けないね」と互いに話した。
この道は何度も歩いたが、以前は祖父も一緒だった。
祖父母には、私が幼いころからかわいがられ、よく泊まりに行った。祖母とは買い物に出かけ、塾の送り迎えなどをしてもらっていた。祖父は、私に紅葉を見せるため遠出してくれたり、私がソファーで寝ていると毛布を掛けてくれたりした。
1年半前、祖父が亡くなった。晩年は認知症だった。私は症状が少しでも和らぐのでは、と思い、会うたびにハグをし、散歩にも出かけた。
だが、祖父が亡くなる前は、自分の受験勉強と重なり、なかなか会いに行けなかった。入院中の祖父にようやく面会したときは、歩くことができず、言葉をはっきり話せなかった。
もっと散歩すればよかった、もっと会いに行けばよかったと後悔している。返事がもらえるときに、「いつも見守ってくれてありがとう」と伝えるべきだった。
祖父が亡くなった後、1人で暮らす祖母のところには、できるだけ足を運んでいる。コロナの緊急事態宣言後は、毎日、祖母とビデオ通話でやりとりした。宣言が解除された後は、土日に祖母の家に行っている。
祖母を感染させてはいけないと、私自身は、人混みの多い街中に、なるべく出かけないようにしている。
大好きな祖母と祖父のために、今、私ができることだ。
31<< | >>33 |