48. 年賀状、出してもいいですか?
淑徳大学2年 坂本みゆり
「年賀状、送ってもいい?」
年末にそんな風に尋ねるようになったのはいつ頃からだろうか。小さい頃は「年賀状送りたいから、住所教えて!」と聞いていたのが、成長するにつれて、いつの間にか、年賀状を出すことに「許可」を求めるようになっていた。
先日、授業の一環で、同じ大学に通う2年生約20人に、どのくらい年賀状を書いているのかを調査するアンケートを行った。「毎年出している」「出したことがない」「自分からは出さない」「昔は出していたが、今は出さなくなった」の4つの選択肢に分けて調査をしたところ、「昔は出していたが、今は出さなくなった」と答えた人が最も多い50%だった。
なぜ、年賀状を出さなくなったのだろうか。多く挙げられたのは、SNSの普及により、わざわざ手間をかけて年賀状を送ることがなくなったということ。書く時間がなくなったということ、そしてもう1つ、「送る相手がいなくなったから」ということだった。私はまだ毎年年賀状を出しているが、「送る相手がいなくなったから」という理由には共感を覚える部分があった。
幼い頃、年賀状を出すという行為は当たり前のことだった。年末が近づくと、小さなメモ用紙にいくつも自分の名前と住所を書き、それを名刺のように友人たちと交換し合う。個人情報が危ないだとか、去年も交換したのだから今年は交換する必要がないだとか、そんなことは考えたこともなかった。「年賀状を出す」ことを、1つのイベントとして楽しんでいたのである。
しかし、中学校、高校と年齢を重ね、周りからも徐々に年賀状を出す人が減っていくにつれて、私の中でも変化が生まれ始めた。年賀状を出すことに、遠慮を感じるようになったのだ。「今年は出さないつもりだったのに、送られてきたからには返さないと」「急いではがきを用意しなくては」。年賀状を送ったことがかえって相手の負担となってしまうのではないか。年の瀬のせわしなさから解放され、ゆっくりできるはずの新年に、義務感を与えてしまうのではないか...。そんなことを考え、送る枚数は年々少なくなっていった。気を遣いすぎているのかもしれないが、同じく年賀状を毎年出している友人にこの話をしてみると、「分かる。それで結局、毎年出す者同士でしか出さなくなるよね」と話してくれた。同じように考える人も、案外少なくないのかもしれない。
ずっと昔から、毎年恒例のイベントとして身近な存在だった年賀状。これから先、今よりももっと、気軽に送ることが難しくなってしまうかもしれない。けれど私は、これからも年賀状という1つの日本文化をずっと大切にしていきたいと思う。相手のことを思い浮かべながら、1枚1枚心を込めてメッセージを添える。そのひと手間が、新しい年を温かな気持ちで迎えることにつながると信じているからだ。
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