MyScope 6.社会に出る期待と不安

「知らない世界を知りたい」とロシアやアメリカに留学もした(写真は観光客でにぎわうモスクワ)

学生新聞「キャンパス・スコープ」のメンバーが自身の日常や思いをつづります。


6.社会に出る期待と不安


上智大学3年 藤田梨佳子

 

 「都会と違って田舎は職がなく、貧乏から抜け出せない。だから酒を飲むしかない」。大学2年の夏、日本とロシアの学生が交流する団体の活動で、西シベリア南部を訪れたとき、現地の人がそう嘆くのを聞いた。
 カザフスタンとの国境に近い小さな村。交流団体で知り合った女子学生の帰省先だった。彼女は3人きょうだいだが、父親はそれぞれ異なり、母親の現在のパートナーは誰の父でもないという。
 弟の実父はアルコール中毒で亡くなったらしい。以前住んでいた家に連れて行ってもらったが、廃屋のような建物で、入り口には実父の恋人だったという女性が酔いつぶれていた。
 日本では、貧困から抜け出せない人は怠けているだけという声を耳にする。私の祖母は「若いころに働かなかったから年金だけでは暮らせない」と言う。「経済格差は努力の差」と指摘する友人もいる。
 だが、好奇心の強さからまだ見ぬものを見るために様々な場所に足を伸ばしてきた私は、日本の雇用や家庭環境が世の中のすべてではないことを知った。
 私は、これからも広い世界を見続けたい。そして、弱者の苦しみを考えられる人になりたいと思う。
 ただ、社会に出たら、好奇心を追求できる仕事や職種は限られる。給料が高い仕事に就けば、弱者を目にしない環境に自分を埋没させてしまう恐れもある。
 ロシアの辺境の地には、酒の空き瓶があちこちに転がっていた。その光景を忘れないか、誰にも共感しない人間に戻るか。これから社会に出る私には期待と不安が交じる。



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(2020年1月24日 10:30)
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