[10]目的、見失っていませんか?
平成の始め、近くのお寺に大きな塔が建てられた。ちょうどその年、一人の男の子を授かった人がいた。息子の健やかな成長を祈りその人は、30年間、毎年欠かさずその塔にお参りして、御朱印を集めている。 平成が終わり令和となった今。御朱印帖には、31枚の大塔の御朱印が並んでいる。願いは届き、息子は順調に育っている。 またある人は、退職を機に近くの観音様を回ることを始めた。自分と家族の健康を祈願しながら御朱印を集めた。お陰で、本人も家族も健康で幸せである。 突然このようなことを書いたのは、ここ最近の御朱印ブームが気になっているからだ。 先日令和改元が行われた日。その日の御朱印をいただくために、多くの人が様々な寺社に行ったという。わたしの周りにも、普段は寺社にはなんの関心もない人が、令和元年の御朱印をもらったと喜ぶ姿が見られた。 確かに御朱印をスタンプラリーかの如く集めることで、寺社に出向く人が増えるのは悪いことではない。しかし、その目的が本来の祈願を忘れるものであってはならないと思う。 時として、目的を見失いがちな行動を省みることの大切さをしみじみと感じる御朱印ブームである。 |
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田中孝宏 小学校長
1960年千葉県船橋市生まれ。83年4月、小学校教諭に。2011年から現職。「ブラタモリ」にならって「ぶらタナカ」を続けている。職場の仲間や友人を誘って東京近郊の歴史ある地域を歩く。「人々はなぜ、この場所に住むようになったのだろう」と考えると、興味は尽きない。