タナカ校長の徒然日誌[14]すべての基本は――

[14]すべての基本は――

 

 「人をぶっちゃダメなんだよ。」

 地下鉄の車内にクレヨンで書いたような文字で掲げられた広告。小学生に向けて書かれたような書体と文章だ。デザインとして目を引くことを目的にしたのだろうが、いろいろ考えてしまう。もしかしたら、こうした子ども向けの文字や言葉でないと伝わらない世界になったのかと不安になる。

 1日の読書時間が「ゼロ」の大学生が過半数、社会人になっても、半数近くが「ゼロ」であるという調査がある。文章を読む経験が少なくなっているのは、事実だ。

 新聞離れの理由は、ネットなどの新しいメディアの出現だけではないのではないか。文章を読む機会や文章を書いて考えを伝え合うことが、あまりにも少なくなっていて、文章に対する忌避感が増しているからだ。

 映像やアニメ、音楽などのメディアが、広く万人に受け入れられ、コミュニケーションに生かされることを拒むわけではない。しかし、そのすべての基本となる言葉を使った文章は、もっと重要視されていい。

 日本語という稀有な言葉にわたしたちは、もっとなれ親しみ大切にしていく気持ちを持ちたいものだ。

 

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田中孝宏 小学校長

1960年千葉県船橋市生まれ。83年4月、小学校教諭に。2011年から現職。「ブラタモリ」にならって「ぶらタナカ」を続けている。職場の仲間や友人を誘って東京近郊の歴史ある地域を歩く。「人々はなぜ、この場所に住むようになったのだろう」と考えると、興味は尽きない。

 

(2019年11月12日 16:15)
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