[15]優れた能力、奪うものは...
子供たちの様子を見ていると、時々あらぬ方向を見ていることがある。何かあるのかと思い、その先を見てみる。特に何かあるわけでもない。子供たちに聞いてみても「別に」という答えだ。 昔、こんなこともあった。廊下に洋服の落とし物があった時、先生たちでいろいろ探しても落とし主がわからない。途方にくれていた時、子供たちが何事かと回りに集まって来た。そしておもむろに、落とし物のにおいをかぐと、〇〇さんのだと言い出した。こうして落とし物は落とし主に届いた。 そういえば、子供たちは大人の聴くことができない周波の音を聴くことができるということを本で読んだことがある。 私たち大人は、子供の頃のこうした感覚を、歳をとるほどに失っていっているのだろう。日頃、子供たちと接していると、子供たちを羨ましく思う。 その五感の一つである子供たちの視力が落ちているという記事があった。原因のひとつには、ゲーム機などのディスプレイを見る時間の長さがあるともいわれる。 年老いて失われるものは、いたしかたないものである。しかし、現代の技術の発展が、人間の本来持っていた優れた能力を奪う方向にあるとしたら残念である。 |
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田中孝宏 小学校長
1960年千葉県船橋市生まれ。83年4月、小学校教諭に。2011年から現職。「ブラタモリ」にならって「ぶらタナカ」を続けている。職場の仲間や友人を誘って東京近郊の歴史ある地域を歩く。「人々はなぜ、この場所に住むようになったのだろう」と考えると、興味は尽きない。