沼田 晶弘
第14回 アナザーゴール(3)
♣全部の知事に手紙を送れ!
だって、せっかく作った「勝手に観光大使」なんだから、その都道府県の知事に見てもらいたいじゃないですか。
パワポ資料を各自でプリントアウトして、そこにプレゼンのトークを全部書き込ませました。自己紹介と、どうしてこういうものを作ったのかを説明する手紙を自分で書いて、さらにタンニンからの手紙も添えて、クラスの38人がそれぞれ「勝手に」担当した都道府県の知事全員に送りました。
ちょっと予想外の問題も起こりました。「知事選の真っ最中なんだけど......」と、3人の勝手に観光大使が相談にやって来ました。うーん、それは困った。せっかく送った途端、相手が知事でなくなったら意味ありません。開票結果が出るまで待とうかということになりました。地方の知事選の行方に、縁もゆかりもない東京の小学生がハラハラするなんて! うち2人は現職が当選しましたが、1県だけ知事が変わっちゃいました。危ないところでした。
そんな子どもたちの熱意が通じたんでしょう、ほぼすべての知事から、お礼の手紙をいただきました。鉛筆とかボールペンとかの地元グッズを送ってくれたところも多かった。その県の勝手に観光大使はめちゃくちゃ喜んでいました。
♥子どもを感激させた兵庫県と島根県
その中で、特にボクたちを感激させたのが兵庫県と島根県です。まず、兵庫県知事から来た手紙には「勝手に観光大使なんて言わないでください」と書いてありました。えっ?「その代わり、特別観光大使に任命します」!
これには本人も驚いて、「オレどうしたらいいの?」とオロオロ。「んー、特別観光大使になったんだから、これからも兵庫県のために頑張ったらいいんじゃないの?」とボクが言うと、「うん、わかった!」。きっと彼は、おとなになってもずっと兵庫ファンであり続けることでしょう。
もっとすごかったのが島根県です。「感動したので感謝状を持って学校に行きたい」という知事からの返事が来ました。で、本当に来たんですよ、はるばる島根から――「しまねっこ」が! 教室に! いや、けっこうかわいかったです。島根県の勝手に観光大使は感激して、6年生になった今も「しまねっこ」押しのキャンペーンをしています。
「しまねっこ」は、昨年の「ゆるキャラグランプリ2015」では第10位でしたが、それをいつかグランプリに輝かせるのが勝手に観光大使の夢です。
♠方言にだって詳しくなる!
勝手に観光大使になったことで、子どもたちはものすごく勉強して、その県の「専門家」になりました。ボクが知らないようなことをよく知ってるわけです。
ボクは出前授業で日本各地の小学校に行くことがありますが、出前授業のツカミでは「地元ネタ」がとても重要です。
「あのさぁ、明日から福井なんだけど、何か面白いネタない?」と、ボクが福井県の勝手に観光大使に聞いた時、彼は少し考えて、「ハヤクシネバ、ってのはどう」
「え、早く死ねば?物騒だね」「いや、福井では『早くしなさい』って意味なんだよね」「へえ、福井の人が東京で言ったら大変だね」
そのネタは、福井の小学5年生にちゃんとウケました。いや、勝手に観光大使すごい。方言の知識もハンパないよ!
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