[20]ネーミングは注意深く
表彰状や卒業証書など人の名前を呼ぶ時には、緊張した。名前を間違えてはいけないという責任感に加え、昨今は読み方がわからない名前が多かったからだ。漢字の横にふりがなを書いた付箋をつけるなどの工夫をした。時々その付箋が手にくっついたり、賞状についてしまったりして慌てたこともあった。 最近は、名付けた人の思いが伝わる素敵な名前ではあるが、なかなか読むのが難しいというケースも多い。たとえば「宇宙」と書いて「そら」「原子」と書いて「あとむ」などがあった。 先日、王子様という名前を変えた人の記事があった。「唯一無二の王子様のような存在」という母の思いだったということでつけられたようだ。いじめなどはなかったものの、大人になってからはどうかと思い、高校卒業と同時に改名に踏み切った。本人も母親の思いを大切にして、18年間過ごされてきたようである。 人の名前に関わらず、名前をつけるのはとても大事なことだと思う。ネーミング次第で、同じ商品でも売れ方が違うというような例はいくつもあげられるだろう。 しかし、もし新型コロナウイルスを「コビット19(ナインティーン)」などと呼ぶと、なんとなくアイドルっぽくて、ちょっと違和感を覚える。決して憧れの対象ではないからだ。名前をつけるときは、注意深くありたいものだ。 |
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田中孝宏 読売新聞教育ネットワーク・アドバイザー
1960年千葉県船橋市生まれ。元小学校長。「ブラタモリ」にならって「ぶらタナカ」を続けている。職場の仲間や友人を誘って東京近郊の歴史ある地域を歩く。「人々はなぜ、この場所に住むようになったのだろう」と考えると、興味は尽きない。