田中センセイの徒然日誌[22]100年後の人たちは...

[22]100年後の人たちは...

 

 「てるてる坊主てる坊主 明日天気にしておくれ」

 子供たちは、運動会や遠足の前日、願をかけて熱心に祈る。大人になっても勝負事のとき、験(げん)を担いで信じている物を持ち歩く。運を天に任すとき人はこうした行動をよくとる。

 このコロナ禍の中でもそうだ。疫病よけに効くとされる妖怪「アマビエ」、または「アマビコ」が様々なところで取りざたされている。あるいは、作物の豊凶や疫病、天災などの予言をするという「件(くだん)」もそうであろう。それぞれの妖怪たちは、江戸時代から様々な天災が起こるときに突如として現れてきた。きっとなにかしら、それを想像させた出来事が当時あったのだろう。

 さて、5月末から一匹のシカが東京の荒川河川敷に現れた。人々が外出自粛する中、これ幸いと荒川沿いに下ってきたのかもしれない。

 しかし、このシカが現れるとほぼ同時に緊急事態宣言が解除された。偶然であることは百も承知なのだが、100年後の人がこの出来事をどうみるだろうか。シカは受け入れ先の動物園「市原ぞうの国」(千葉県市原市)に移され、英語の「エスケープ(逃走)」から「ケープくん」と命名された。

 はじめ引き取り手がないとき、シカを神の使いとする香取神宮(同県香取市)が引き取ろうとした。「このままでは処分されるかもしれないところを、やはり神と崇められる『象』の動物園に引き取られた」「『ケープ』という名は感染症からの避難という意味だ」などと尾ひれがついて伝わったとしたら。

 きっと100年後の人々は「ケープ」を疫病退散、自粛解除の守り神として願をかけることだろう。

 

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田中孝宏 読売新聞教育ネットワーク・アドバイザー

1960年千葉県船橋市生まれ。元小学校長。「ブラタモリ」にならって「ぶらタナカ」を続けている。職場の仲間や友人を誘って東京近郊の歴史ある地域を歩く。「人々はなぜ、この場所に住むようになったのだろう」と考えると、興味は尽きない。

 

(2020年6月18日 12:55)
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