田中センセイの徒然日誌[25]誰かが活けてくれた花

[25]誰かが活けてくれた花


 

 男女の共同生活を通して恋愛模様を映し出す人気番組の出演者が自殺した。SNS上で激しい中傷を受けたことが原因であるとみられている。インターネット上での誹謗中傷は、止むことなく、新型コロナの感染者や医療従事者への誹謗中傷も続いている。多くの人が、様々な論調でその非を説き訴える。これが良い事態だとは誰も思ってはいない。このニュースを知り、わたしは、憤りを感じ、自分の非力を嘆いた。

 

 そして、あることを思い出していた。毎日その児童は、花壇の花に水やりをしていた。毎日毎日誰にも知られることなく忘れずに。花壇はその児童のおかげで多くの花や野菜が育まれていた。「毎日ありがとう」と声をかけると、その児童は、はにかみながら笑みを浮かべ逃げるように立ち去った。

 その児童が、まわりの人間関係が原因で、登校をしぶっていると聞いたのはいつだったろうか。毎朝、その児童が登校しているかどうかを確認する日々が続いた。大事にはいたらなかったものの、わたしの心の中には何かしこりのようなものが残った。

 

 トイレにそっと飾られている野の花。それは、人知れず誰かが活(い)けてくれたもの。その誰かのことを決して忘れてはいけません。昔そんな話を聞いたことがある。

 普段気づかないことに心を留め、正しい人の行動や言葉が、誹謗中傷より広く正しく伝わるようにわたしたちは努力しなければいけない。

 

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田中孝宏 読売新聞教育ネットワーク・アドバイザー

1960年千葉県船橋市生まれ。元小学校長。「ブラタモリ」にならって「ぶらタナカ」を続けている。職場の仲間や友人を誘って東京近郊の歴史ある地域を歩く。「人々はなぜ、この場所に住むようになったのだろう」と考えると、興味は尽きない。

 

(2020年9月 3日 13:10)
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