[27]クレバ号の気持ち
行方不明となっていた女性の捜索に投入された警察犬が、無事発見された。 名前は「クレバ号」。これまでに、4人の行方不明者を発見し、表彰もされた優秀な警察犬だそうだ。その犬が、突然任務中に逃げ出した。警察では、「人間の目とか鼻に感じられないものがあったのかもしれない」と指摘している。
事実として逃走は、警察犬にとっては大きなミスなので、なんらかの処罰があるであろう。
だが、どうだろう、その時同僚の警察犬が先に捜索していた女性を遺体で発見したことを知り、自暴自棄になったのではないか。あるいは、先に女性を見つけてその女性が知り合いだったことに混乱したのではないか。クレバの気持ちをいろいろ想像してみた。ふざけているように思えるが。 本人以外には、時には本人にさえ、気持ちなどはっきりしないことはある。 子供たちと話している時、特に何かあった時の理由を聞く場面で、子供たちが固まって何も言わなくなることがある。そんな時、往々にして大人は事実だけを見て決めつける。時々それで、罰していることも見てきた。でも、子供は何かの思いを胸に抱いているのに表現できないでいることがある。そんな時大切なのが、その子の気持ちを様々に想像する力だ。
想像を巡らしているうちに、子供もなんとなく自分の思いに気づく。人は自分のために想像し、思いを巡らしている人には悪い気はしない。
コロナが陽性だと告げられた人の思い。マスクをしたくてもできない人の気持ち。
あらゆることに多様な想像を巡らせ対処しよう。今こそ互いに想像し合い、思いを巡らしてほしい。
それにしても、これまでのコロナ禍の動物ニュースを使って、迷いシカの「ケープの冒険」崖に取り残されたヤギの「ひとりぼっちのポニョ」。そして、「クレバの憂鬱」と動物小説も想像できるかもしれない。 |
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田中孝宏 読売新聞教育ネットワーク・アドバイザー
1960年千葉県船橋市生まれ。元小学校長。「ブラタモリ」にならって「ぶらタナカ」を続けている。職場の仲間や友人を誘って東京近郊の歴史ある地域を歩く。「人々はなぜ、この場所に住むようになったのだろう」と考えると、興味は尽きない。