田中センセイの徒然日誌[28]学びの原型

[28]学びの原型

 

 マンガ「鬼滅の刃」が、アニメ映画で大ヒット。単行本の売れ行きもとても伸びている。コスプレや描かれた背景に似ているお寺が聖地になるなど広がりをみせている。こうしたマンガの影響は今に始まったことではない。近年では、ワンピースやドラゴンボールなどもそうだ。子供たちは必ず主人公になりきって行動するので、その様子を見て、つい微笑んでしまう。

 

 考えてみれば、わたしの小学校時代には、「巨人の星」がそうであった。大リーグボールに魅せられて、消える魔球やバットに当たる球など友達を打席に立たせて、主人公になりきって投げていた。

 

 「真似び」は、学びの原型であるということを教わったことがある。子供時代のこうした行動を通して、対象をとらえ自分の中に取り組んでいっているという。それは、知識や技術も同じだ。興味や関心があるものに惹(ひ)かれ、それを正確に模倣し、自分の中に定着させていく。

 

 学習が成立していく過程だ。重要なのは、学習は興味関心から始まるということだ。「学びたい」というモチベーションがないと学習は進まない。それは子供に限ったことではないだろう。

 

 メディアから得るたくさんの情報。その情報から、より知りたいというモチベーションを湧かせ、学び続けることが求められている。竈門(かまど)炭治郎や星飛雄馬が終わったら、次の興味関心を探しに行かなければならない。

 

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田中孝宏 読売新聞教育ネットワーク・アドバイザー

1960年千葉県船橋市生まれ。元小学校長。「ブラタモリ」にならって「ぶらタナカ」を続けている。職場の仲間や友人を誘って東京近郊の歴史ある地域を歩く。「人々はなぜ、この場所に住むようになったのだろう」と考えると、興味は尽きない。

 

(2020年12月 9日 13:50)
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