[29]一言の重み
昨年12月8日に、生誕80年、没後40年を迎えたジョン・レノン。記念のアルバムが発売されたり、展覧会が催されたりした。
ジョン・レノンといえばビートルズである。昨年2月末、コロナ禍が襲うぎりぎりのタイミングで、私が教師一年目で担任を受け持った子どもたち(今ではりっぱな大人たち)が、還暦の祝いを催してくれた。席上、「先生、卒業の時話してくれたビートルズの『レット・イット・ビー』のこと覚えていますか?」との質問。
覚えていなかった。参加したほぼ全員から「そうそう。なんか心に残ったんだよな」「あの一言でイギリスにも行きました」などの声があがるたび、いたたまれなくなった。正直どんな内容だったのかも定かではない。
時と場によって一言は、他の人に大きな影響を与える。まして、教師の言葉は重要だと遅きに失しながらも改めて考えた。
私達はコロナ禍の中、新しい生活様式をはじめとして様々なことを学んでいる。誹謗中傷の言葉禍もそのひとつではないだろうか。今こそみんなで学んだことをこれからの社会に生かしていかなければと思う。
ジョン・レノンも「イマジン」で「一人ずつみんな一緒に行えば世界中に広がる」と言っている。そう、これを書いたことを今度は覚えておかなければ!
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田中孝宏 読売新聞教育ネットワーク・アドバイザー
1960年千葉県船橋市生まれ。元小学校長。「ブラタモリ」にならって「ぶらタナカ」を続けている。職場の仲間や友人を誘って東京近郊の歴史ある地域を歩く。「人々はなぜ、この場所に住むようになったのだろう」と考えると、興味は尽きない。