田中センセイの徒然日誌[31]下駄箱を見れば

[31]下駄箱を見れば

 

 新型コロナウイルスへの感染が世界中で拡大する中、スリッパの町、山形の河北町に、室内で靴を履く習慣がある海外の国や地域から、感染防止のためにスリッパを購入したいという問い合わせが相次いでいるという。

 

 会社に勤めるようになって、一番感じた違いは上履きに履き替えることがなくなったことだ。教員時代に5校で勤務したが、上履きのなかった学校は1校だけだった。もちろん日本の家庭で、土足で屋内に入る家は稀だろう。コロナ禍にあってその事実がクローズアップされた形だ。

 

 教育者の森信三が、(1) 朝、必ず親に挨拶をする子 (2)親に呼ばれたら必ず、「ハイ」 とハッキリ返事のできる子 (3)履物を脱いだら、必ずそろえ、席を立ったら必ずイスを入れる子にすること、という 「しつけの三原則」 をあげている。

 

 履物をそろえるというのは、学校生活の中では顕著にわかる事柄だ。学校は、上履きに履き替えるため必ず下駄箱がある。

 

 教師になりたての頃、先輩から「学校の荒れ具合は、花壇の手入れと下駄箱の整頓加減でわかる」と聞かされた。確かに長い教員生活の中で子供たちが不安定な時ほど外履きの靴が散らばっていたり、上履きがそろっていなかったりと下駄箱が乱雑になっていた記憶がある。

 

 こんなことを思い出して、コロナと戦うために一人自分の玄関の家族の下履きをそろえ始めた。これも新しい生活様式かもしれないな。

 

 

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田中孝宏 読売新聞教育ネットワーク・アドバイザー

1960年千葉県船橋市生まれ。元小学校長。「ブラタモリ」にならって「ぶらタナカ」を続けている。職場の仲間や友人を誘って東京近郊の歴史ある地域を歩く。「人々はなぜ、この場所に住むようになったのだろう」と考えると、興味は尽きない。

 

(2021年3月 2日 16:30)
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